・ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 (1943年12月12日、15日 ベルリン フィルハーモニーホール ライヴ録音) ドイツ帝国放送開発の磁気テープ方式テープレコーダーのマグネトフォンによる録音。 当日は同じブラームスのハイドンの主題による変奏曲、ピアノ協奏曲第2番(エッシュバッヒャーのピアノ)が演奏されています。 フルトヴェングラーのブラ4中最も緩急の落差の大きい演奏。ティンパニパートに加筆があるのもこの録音のみ。 第一楽章冒頭は遅めであるものの第一音は他の録音と比べて短め、20小節あたりから急激に加速していきます。91小節のヴァイオリンの下降音型の自然なディミヌエンドが印象的です。展開部直前の135,136小節の一拍めにティンパニを加え、243小節から再現部に至る経過部分のテンポの変化も他の録音よりも極端に減速。394小節からの悲壮感を漂わせた手に汗握るクライマックスはまさにフルトヴェングラーの独壇場。 第二楽章の静けさの中に漂う寂寥感はまた格別もの。第三楽章も遅いテンポで暗く悲劇的に進行。317小節のティンパニのクレシェンド付加は、ヴィスバーデン盤にも聴かれた表現。29小節のティンパニの16分音符+8分音符がトレモロに聞こえていましたがこれは鈍い録音のためかもしれません。 この楽章の途中からブブブ・・ブウブといった混信しているようなノイズが終始聞こえます。 第四楽章冒頭ではパッサカリア主題のフレーズ最後の音が次の小節になだれこむような独特の表現。第4変奏1小節前の木管とホルンの下降音型はテヌートで奏させ、続くうねるようなヴァイオリンの動きが印象的。緩急自在に自由に泳ぐ第12変奏のフルートソロの後、第13変奏は極端にテンポ落とします。236小節からの急速なテンポアップにはさしものベルリンフィルもアンサンブルに乱れが生じていました。 悲劇的な高揚感と諦めにも似た謐さが全曲を支配。1949年のヴィスバーデン盤と比べるとテンポやダイナミックスの即興的な変化は似ているものの、1949年盤とは聞こえてくる音楽の印象は全く異なるものでした。 ドイツの放送局に保管されていたテープと再生装置はナチ崩壊時に旧ソ連軍に持ち去られました。その後ソ連のメロディアがこのテープを元にLP化。このメロディアのLPを入手したイギリスのユニコーン社がダビングしLP化したものが当初一般に流布していました。私が聴いたのもこのユニコーン由来の70年代初頭に日本フォノグラムから発売されたLPです。旧ソ連崩壊の際マスターテープからのデジタルコピーがドイツに返還され、ドイツグラモフォンからCDが発売されている現在、このLPは音質の面でかなり不利なものですが、演奏の鬼気迫る雰囲気は充分に伝わってきます。 (2007.08.04) |