「エルネスト・アンセルメ(1883 - 1969)」 スイスのフランス語圏の町ヴヴェイ生まれ。パリ大学とソルボンヌ大学で数学を学び、数学者としてローザンヌの大学の教授となりましたが指揮者に転向。 アンセルメは、ドビュシーやラヴェル、ストラヴィンスキーとも親交があり、フランス、ロシア音楽の演奏には定評がありました。ドイツ物ではベートーヴェンの交響曲全集やワーグナーの管弦楽曲集の録音もあり、ブラームスは交響曲全集を残しています。 ・スイス・ロマンド管弦楽団 (1963 ジュネーヴ ヴィクトリアホール スタジオ録音) デッカに残した交響曲全集中の1枚。交響曲第3番の演奏でも感じたことですが、バランス良く整理された見通しの良い音響が魅力的な演奏。いくぶん速めの快適なテンポで音楽が流れる最初の二つの楽章は聴いていて実に爽快。 第一楽章冒頭から速めの快適なテンポで音楽は爽やかに流れ、譜面を見事に音化し旋律の絡み合いがレントゲン写真を見るように鮮やかに浮き上がります。33小節目2拍めの弦楽器の<>をずるっと滑るように強調。再現部直前の246小節のドルチェの生かし方も美しく終結部のも力強さに欠けていません。 堂々としていて美しい第2楽章も見事な出来。弦から管への旋律の受け渡しも鮮やかなもの。一定のテンポ感で流れて行きますが終盤103小節めで減速しクラリネットソロに繋げて終結。あくの強さや重厚さとは無縁ですがこのような純音楽的なブラームスも良いものです。 ところが第3楽章でオケの非力さが露呈。2拍子スケルツォのテンポ感覚が楽員の間で統一されていないようでアンサンブルが不揃い、リズムも鈍重、響きの透明さも失せ第2楽章までの好調に比べまるで別のオケのようです。中間部181小節からのpoco meno prestoの3,4番ホルンもかなりオソマツで通常ならば取り直しをするところです。 続く第四楽章も冒頭コラールあとの第4変奏の速いテンポが木に竹を繋いだような不自然さ。オケに余裕がなく各変奏バラバラに展開。69小節めからしだいに加速。第14変奏のトロンボーンのコラールは美しく響きますが第22変奏び弦の刻みのタドタドしさにがっくり。最後の一音直前の微妙なタメも周囲の様子を探りながらのためらいのように響きます。 はじめの二つの楽章が良い出来なだけに後半の不調が残念。オケがブラームスに慣れていないのでしょうか。 今回聴いたのは国内盤の全集CDです。パステル画のような美しい響きで60年代初めの録音としては良い音でした。 (2008.02.17) |