ハンス・クナッパーツブッシュ(1888 - 1965)」 シュタインバッハに指揮法を学んだクナッパーツブッシュには、二種の録音があります。 ・1952年12月12日 ブレーメンフィル ライヴ録音 ・1953年 5月 8日 ケルン放送響 ライヴ録音 ・ブレーメンフィルハーモニー管弦楽団 (1952年12月12日 ブレーメン グロッケンザール ライヴ録音) 悪魔的な巨大さが圧倒的な存在感で迫ってくる交響曲第3番ほどの感銘はありませんが、極端なデフォルメの中に内省的な静けさが共存する個性的な演奏でした。 第一楽章冒頭は速からず遅からず、繊細な響きを聴かせながら自然な流れで開始。9小節2拍目の短いクレシェンド、デクレシェンドを強調するあたりから次第に遅くなり第2主題は悠然たる歩みで聴かせます。続く81小節からの弦楽器のピチカートを極端に強調。135小節で大きなタメを聴かせながら展開部に突入。再現部前の258小節では突然の大きなパウゼが深い闇を感じさせ、331小節では譜面指定のフォルテ部分をピアノで開始しクレシェンド強調。終盤394小節からドラマティックに盛り上げますが、オケが非力で腰砕けなのが惜しいと思います。特に1番ホルンは完全玉砕状態。 ゆったり始まる第ニ楽章は30小節から速め、37小節から息の長いクレシェンド。ここで1番ホルンの音程が悪くヨレヨレ状態なのが気になりました。41小節でチェロのエスプレシボの痩せた響きなのは録音のせいでしょうか。51小節のクレシェンドで速め、階段を着実に登るように再現部に到達。 この楽章最大の聴かせどころ88小節からは一拍めをズシンと強調し重厚に歌い上げ、97小節の下降音型で大きくタメをつくりながら98小節は大きく揺れて歌います。113小節のホルンの冒頭再現をアクセント気味で短めで演奏する中、チェロはギシギシときしみながら上昇。 愛嬌さえ感じさせる遊び心が漂う第三楽章は第一拍目に大きなアクセント付けながら開始。ティンパニの長大なクレシェンドと弦楽器の後打ちの重量感、中間部Poco meno prest4小節前の静けさが印象に残ります。 そして鳳が羽を広げるような大きな広がりを持って第四楽章冒頭シャコンヌが始まります。第四変奏ではヴァイオリンの1拍目を短くして力を抜くアコーギクで聴かせ。第7変奏はタメをつくりながら粘ります。飾り気皆無の石造りの建造物のような頑固さで曲は進行しながら壮大なドラマを展開。最後の10数小節ではテンポを猛烈に上げていました。 シュタインバッハの直接の影響下にあったことを思わせる一定のテンポ感の中で柔軟なフレージングで聴かせるケルン音楽院の同期生フリッツ・ブッシュの演奏とは対照的で、絶えず揺れ動くテンポと、時にはクレシェンド、デクレシェンドを極端に強調する個性的な演奏でした。 今回聴いたのはArchipelのCDです。弦楽器のピチカートも生々しく比較的良好な音質だと思います。 (2007.09.01) |