「ブラームスの4番を聴く」30・・ミトロプーロス
「ディミトリ・ミトロプーロス(1896 - 1960)」
ギリシャ、アテネ生まれのミトロプーロス。聖職者の名門の家に生まれ、生涯独身を通した孤高の指揮者。驚異的な記憶力の持ち主で、どのような複雑なスコアも一度目を通すだけで暗譜してしまったそうです。

・ニューヨークフィルハーモニック
(1952年?     ニューヨーク ライヴ録音)

ニューヨークフィル音楽監督時代のライヴ。交響曲第3番とのカップリングです。(こちらは「ブラームスの交響曲第3番を聴く」で紹介しました)
精緻で透明な響きと自然でさりげない音楽運びに全てを知り尽くした大人の音楽を感じさせます。

第一楽章冒頭は速めのテンポで開始。小節の二拍めで微妙な間を空ける独特のアゴーギク。第2主題でテンポを落とし220小節から微妙にテンポ揺らせ、386小節でティンパニを強打。終盤では431小節からじっくりとしたタメをつくりながら巨大なクライマックスが印象的。

第2楽章は30小節めのヴァイオリンを下で支えるピチカートが実に雄弁。41小節から第2主題はチェロとヴァイオリンがしみじみと歌います。
68小節からわずかに加速。やがて音楽は少しずつ緊迫感を増していきます。85小節で大きな破局を迎えた後に88小節目で安息の世界に突入。ここで弦楽器群によって視界の開けた大きな世界が広がり、これが実に感動的。さらにクラリネットソロから終結部に至る終盤のテンポの変化も見事としか言いようがありません。

第3楽章からは重厚でメリハリを効かせた劇的な表現が顔を出します。続く第4楽章でもフルートソロが登場する第12変奏まではあっさりと進むものの、第13変奏(73小節)のオーボエソロが粘りの表情を聞かせるあたりから音楽は濃厚でロマンティックなものに変貌していきます。
113小節のトロンボーンのコラールからテンポも遅くなり、16変奏を過ぎるあたりから音楽はうねりながら肥大。さらに遅くなりつつ終結部まで行ってしまいます。

冷静で清潔感漂う前半に楽章とロマンティックで濃厚な表情を聞かせる後半の二楽章との対比がユニーク。当時のニューヨークフィルのうまさと高貴な雰囲気の漂う感動的な第二楽章が非常に印象に残りました。

今回聴いたのはイタリア系のマイナーレーベルNOTEから出ていたCDです。50年代前半のライヴとしては標準的な音。
(2007.10.02)