「ブラームスの4番を聴く」31・・・ヴァン・ベイヌム
エドゥアルド・ヴァン・ベイヌム(1901 - 1959)」

オランダのアルンヘム生まれ、名門アムステルダム・コンセルトヘボウ管の副指揮者経て、1939年からメンゲルベルク、ワルターと並んで正指揮者に就任。1946年にメンゲルベルクがナチスドイツに協力したため追放されるや、コンセルトヘボウ管の首席常任指揮者となりました。以後57才で急逝するまでその地位にあり、その間ロンドンフィル(1949 - 1950)ロスアンジェルスフィル(1956 - 1958)の常任指揮者を歴任。

・アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団
(1958年 3月   アムステルダム コンセルトヘボウ スタジオ録音)
フィリップスへのブラームス交響曲全集中の一枚で第一番と第四番のみステレオ録音。
しなやかな音楽運びと暖かな表情。どっしりとした大人の風格をも感じさせる名演だと思います。

速いテンポで進む第一楽章は、エネルギッシュさというよりも肩の力の抜けたすっきりとした表現。コンセルトヘボウ管の渋くも暖かな音色が実に良い味を出しています。第2主題のコントラバスの重量感も印象的。145小節の冒頭の再現は微妙に速めのテンポで進み220小節までは軽く流します。258小節からの再現部は冒頭と同じテンポで進行、終盤の巨大な広がりのクライマックスはまさに巨匠の至芸。

第二楽章は苦みばしった男の魅力が全曲を支配、大切なものをそっと置くような第2主題の柔らかで優しい表情も印象的。この楽章の最大の聞かせ所88小節への入りの細やかなテンポ変化の見事さ、終盤101小節三拍めのフォルテからピアノに変転する部分で微妙に減速して深い余韻を残す場面など、ベイヌムの凄い実力をまざまざとが思い知らされる部分です。

第三楽章はマッシブで強固な意志を感じさせる男性的な表情で聴かせますが、フットワークはあくまでも軽くアクセントもソフト。ティンパニに明瞭度を欠くのには多少の不満は残りますが、258小節のコントラバスのゴリッとした表情は刺激的。

森の奥に分け入ったような深い響きの第四楽章は、音を長めに充分な余韻を残して音楽が進行。オケのまろやかな響きとベイヌムの強固でがっしりとした解釈により古典的な格調の高さとロマンティックさが絶妙のバランスを持って響くのが圧巻です。

モノクロ写真を眺めているような古風な趣もありますが、オケは極上、曲の魅力を充分に引き出した奇を衒わない表現で何度聴いても飽きない演奏です。

手持ちは70年代初頭に日本フォノグラムが出していたグロリアシリーズの廉価盤LPと、オランダのダッチマスターシリーズで出ているフィリップスのCDです。
楽器の粒立ちの良さでCDの方が聴きやすい音でした。

(2007.10.13)