今回は、二つのカラヤン全集再録音です。 ・ベルリンフィルハーモニー管弦楽団 (1977年 10月18日、12月7日、1978年 1月21日 ベルリン フィルハーモニーザール スタジオ録音) カラヤン2度目の全集録音。録音会場がベルリンフィルの本拠地フィルハーモニーザールに変わりました。 第1楽章リピートなし。第1楽章の182小節目、冒頭の3度目回帰部分で下を支えるコントラバスの充実した響きは素晴らしいものでした。 この演奏もよく鳴るオケと流麗なカラヤンの指揮で何の抵抗感もなく、するするとトコロテンのように耳の中を流れていきます。スポーツ的な爽快さとでも言うのでしょうか。 なにかブラームスを聴いているというよりも、カラヤンを聴かされているといった印象でした カラヤンのスタジオ録音演奏を聴くたびに感じるのですが、これほど感想の書きにくい演奏家はありません。楽譜の再現芸術として見るとカラヤンの演奏はいつも完璧に近いものがあります。しかもオケは天下のベルリンフィル。 正直文句のつけようがない演奏が多いのです。私の耳が鈍いからでしょうが、チャイコフスキーやブラームスを聞いても皆同じように聴こえてしまいます。(実演は別) 田舎の人の良いおじさんが、汗を流して懸命に仕事をしているようなカイルベルトの演奏とは全く別次元の音楽です。どちらを取るかは、好みといしか言いようがありませんが、私は完璧で傷のないものよりどこか欠けた所がある演奏の方が親しみを感じます。 ・ベルリンフィルハーモニー管弦楽団 (1988年 10月ベルリン フィルハーモニーザール スタジオ録音) カラヤン4度目の録音にして3度目の交響曲全集中の1枚。オケの響きは66年盤と比べて随分と変わりました。 デジタル録音となったこともありますが、メンバーの世代交代が進み、響きそのものがブラッシュアップされて細身になった印象です。 1988年といえば、カラヤンとベルリンフィルとの間が険悪になっていた時期で、 翌年4月にはベルリンフィルの終身指揮者を辞任、その後7月にはカラヤン自身が急逝してしまいました。 オケの合奏の精度は77年盤の方がわずかに上だと思いますが、細部のルバートや強弱の微妙な変化など、曲の隅々まで指揮者の神経が行き届いているのはこちらだと思います。 好き嫌いはあると思いますが、ブラームスの中でも特に複雑なこの曲をこれほどまでに精妙に演奏した録音はありません。 第3楽章での情緒纏綿たる弦楽器のヴィヴラート、木管の歌の下につける弦楽器の合いの手が軽やかさなどが印象に残ります。 第4楽章は巨大な宗教施設のような音の大伽藍。213小節目の大きなパウゼのように他の演奏にない意表を突く解釈もあります。その後なぜかテンポが落ち緊張感が弛緩してしまったような印象です。テヌートのコラールは木管強調、最後のフェルマーターが極端に長い演奏でした。終結部の改変はなし。 (2005.03.31) |