「サー・ジョン・バルビローリ(1899 - 1970)」 ロンドン生まれ、父はイタリア人で母はフランス人。ロンドン王立音楽院でチェロを学び、11才でチェリストデビュー、このころのチェリストとしての録音もあります。 クイーンズホール管の首席チェロ奏者の後指揮者に転じ、1933年にスコティッシュ管絃楽団の首席指揮者、1936年ニューヨークフィルの音楽監督。 その後マンチェスターのハレ管絃楽団の首席指揮者となり、以後このイギリスの地方オケと深い係りを持つことになりました。ハレ管絃楽団はイギリス第2の歴史を持つ伝統あるオケですが、正直なところ地方のニ流オケといったところです。しかしバルビローリが振ると楽員が一致団結、集中力のある高水準な演奏を聴かせました。 ブラームスの第3番は以下の2種類があります。 ・ハレ管 1952年 スタジオ録音 ・ウィーンフィル 1969年 スタジオ録音 バルビローリのブラームスといえば、ウィーンフィルとの交響曲全集が有名です。他にスタジオ録音ではニューヨークフィルとの第2番、ハレ管との第3番、第4番。 ライヴでは第2番がバイエルン放送響のCDとボストン響との映像があります。 ・ウィーンフィルハーモニー管弦楽団 (1966年 6月 ウィーン スタジオ録音) 交響曲全集中の1枚。バルビローリとウィーンフィルによる唯一の録音です。 日本では音楽評論の大御所、吉田秀和氏が演奏の特徴を紹介したことで有名になりました。 第2番を除く3曲は8日で録音され、ほとんどワンテイクで仕上がったそうです。 良くも悪くもバルビローリ独特の粘りのある、ロマンティック色濃厚な演奏でした。 指揮者とオケが溶け合って完全にメルトダウン状態。遅めのテンポの横に流れる演奏で、ウィーンフィルの音色をこれほどうまく引き出した演奏は珍しいと思います。 第1楽章横に流れる第1主題では、下を刻むチェロ、ヴィオラの着実な歩みが音楽の方向性を確保、リピートなし。フォルティシモでのウィンナホルンの咆哮も効果的。 最後の音では極端に長いフェルマータとヴィヴラート。 第2楽章では木管群の柔らかな響きと、そっと物を置くような第2主題の繊細さも印象に残ります。 甘い第3楽章では、バルビローリの芸風を例える時によく用いられる、熟成したブルゴーニュワインのような深く豊かなフレージングとそれに応えるウィーンフィルの響きとウィンナホルンソロの太い音が独特の魅力を感じさせます。ただ余りにも甘すぎてしつこさを感じる人もいるかもしれません。 第4楽章では、柔らかなあまり149小節以降のクライマックスなど、多少物足りなさを感じました。終結部の改変は初めの2小節のみ。 今回聴いたのは、セラフィムの国内廉価盤LP(EAC30043)と国内盤CD(TOCE7136)ですが、音自体が持つ力感と雰囲気の良さでLPがCDを大きく上回っていました。 (2005.04.17) |