「ジョージ・セル(1897 - 1970)」 ブタペスト生まれですが、両親はチェコ人。3才でウィーンに移り、11才でウィーン交響楽団とピアニストとして競演、16歳で指揮デビュー。翌年ベルリンフィルを指揮しベルリン国立歌劇場の練習指揮者。ストラスブルグ(ストラスブール)、プラハ・ドイツ、ダルムシュタット、デユッセルドルフの各歌劇場の後、ベルリン国立歌劇場の第1指揮者となりました。オーストラリアへ客演中に第2次世界大戦が勃発し、アメリカに移住、1946年にクリーヴランド管弦楽団の常任指揮者。 セルとクリーヴランド管との組み合わせは、室内楽的アンサンブルの精度で、今まで出現したオケの中でも最高水準。 セルのブラ3は3種類の録音があります。 ・アムステルダム・コンセルトヘボウ管 1951年 スタジオ録音 ・クリーヴランド管 1964年 スタジオ録音 ・クリーヴランド管 1965年 ライヴ録音 以下は演奏時間。 I II III IV 1951年 9'40" 7'36" 5'41" 8'33" 1964年 10'17" 8'55" 6'26" 8'51" 1965年 9'51" 7'58" 6'12" 8'33" ・クリーヴランド管弦楽団 (1964年 11月 クリーヴランド セヴァレンスホール スタジオ録音) CBSに残した交響曲全集中の一枚。 この録音は私とってこの曲のメートル原器のようなもので、他の演奏を聴くときの基準となっている演奏です。 クールで知的、完璧な均衡と洗練の極致。恐らくセルの数多くの録音の中でも、これほど純化した演奏は少ないのではないかと思います。それでいて固苦しさを感じさせない歌もあります。 室内楽的な精密さを見せる完璧なオケのアンサンブル、第2楽章の終結部などヴァイオリンとオーボエのヴィヴラートまで同調していてたまげてしまいます。第4楽章冒頭の弦楽器群のユニゾンも一本に聞こえ、終盤のコラールなどオルガンのよう。 両端楽章の複雑な絡みも完璧。即興的な遊びも見せ、第一楽章最大の頂点190小節以降で、木管群とホルンの咆哮している最中195小節の一瞬のパウゼが鮮やかに決まっています。第2楽章の透明感の中にしっとりとした情感、大きな歌に満ちた第3楽章では中間部の木管を支えるチェロの深い余韻が印象に残りました。第1楽章リピートなし。終結部改変なし。 ・アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団 (1951年 9月 アムステルダム コンセルトヘボウ スタジオ録音) セルが首席客演指揮者であったコンセルトヘボウ管とのデッカへのスタジオ録音。この時ドヴォルザークの交響曲第8番も録音しています。 コンセルトヘボウの柔軟な響きを生かしながらインテンポで進めた演奏。凛としさ格調の高さもありますが、セルとしてはちょっと楽天的な演奏に感じられました。 第1楽章リピートなし。終わり219小節目の6拍目でちょっとした間を置いて終了しているのが印象に残りました。楽天的な第2楽章では第ニ主題も明るく響きます。 第3楽章は随分淡白で少し急ぎすぎか。ホルンソロを下で支える弦楽器の響きにさりげないロマンを感じさせます。 第4楽章もすかっとした爽やかさ、第2主題では下を支えるコントラバスもしっかり響きます。ヴァイオリンを滑らせながら盛り上がり突き進み、143小節目ではセルの唸り声も聞かれました。終結部の改変なし。 クリーヴランド管盤ほどの完成度はありませんが、感情の起伏が生の形でよりストレートに出ている演奏だと思います。 (2005.05.11) |