60回を超えたこの「ブラームスの第3番を聴く」、紹介した演奏は映像やライヴを含めると最終的に102種類となりました。 ブラームスの交響曲第3番は実演でも何度か聴いているのですが、掴み所のない難解な曲で、私自身避けていた傾向があり、第21回の定演の曲目が決まった時には、聴く比べの事を考えるとちょっぴり気が重くなりました。そのため連載の最初のころは完全に手探り状態。 実際に演奏し自分達の演奏をDVDで見て、そして連載を終了した今、自分の中ではますます曲に対する謎が深まってしまったというのが正直なところです。 あの大指揮者フルトヴェングラーが「ブラームスの交響曲第3番はよくわからない」、大トスカニーニが晩年「若いころ聴いたフリッツ・シュタインバッハのやり方をまだものにできない」と言わしめた曲。さらに名指揮者たちの悪戦苦闘ぶりの録音を聴けば聴くほど、凡人の私などに理解できようもないという印象をますます深くしました。 そのような中、これはと感じた印象に残った演奏を順不同で挙げると、 ・ワルター&NYフィル、 ・アーベントロート&チェコフィル ・トスカニーニ&フィルハーモニア、 ・シューリヒト&南西ドイツ放送響、 ・クナッパーツブッシュ&BPO、 ・ザンデルリンク&ドレスデン国立歌劇場管 ・ライナー&シカゴ響、 ・フルネ&東京都響 ・ベイヌム&アムステルダム・コンセルトヘボウ管、 ・ボールト&ロンドン響 この中で、ブラームスの演奏解釈の正統な伝承者フリッツ・シュタインバッハの流れを組むアーベントロート、トスカニーニ、クナッパーツブッシュ、ボールトらの演奏が特に印象深いですが、中でもクナッパーツブッシュ&ベルリンフィル盤は、この曲に対して私が持っていた今までの印象を吹き飛ばすほどの強烈な演奏でした。 ただいろいろな演奏を聴いた現在、クナの演奏はブラームスの世界を大きく逸脱した勘違い演奏ではないかとの思いも次第に膨らんでいます。 結局、私自身これからも何度も聴き、末長くお付き合いを願いたいと思う録音は、ボールト、ベイヌム、フルネの3人の演奏でした。 今回の聴き比べで、ほぼ主な演奏は紹介できたと思いますが、朝比奈隆、小林研一郎らの日本の指揮者たち、マゼールやハイティンク、バレンボイムなど現役の巨匠からバーンスタイン、ムラヴィンスキー、ジュリーニらの過去の巨匠など、重要な演奏の積み残しも出てしまいました。 しかし定演も終わり、紹介した演奏も100種類を超えました。心残りはありますが、これにて終了とします。 (2005.06.06) |