「ブラームスの2番を聴く」19・・・・・・戦前派巨匠の演奏 ワルター その4
・ コロンビア交響楽団
(1960年1月27日、30日 カリフォルニア、アメリカン・リージュン・ホール
                        スタジオ録音)

ワルター晩年の一連のステレオ録音によるブラームス交響曲全集中の1枚。
スラリと軽めのオケの響が美しい温かでおおらかな演奏でした。
ニューヨークフィルとの旧盤のような張りつめた緊張感はありませんが、洗練された品格が感じられる演奏です。

演奏としては大指揮者ワルターの片鱗を感じさせるものの、第三楽章終結部のホルンや大四楽章63小節のクラリネットなどの危うい部分もあり、臨時編成オケの弱みが露呈していました。

第一楽章第2主題への自然な移行と96小節の合いの手のヴィヴラートたっぷりのチェロの微妙な動きの爽やかで温かな音が印象的。
434小節でヴィオラとチェロが微妙に揺れながら動きつつ440小節で大きくテンポを落とし後ろ髪を引かれるように終結。

第二楽章もロマンティックな美しい響きに浸りきった世界。
遅いテンポが場合によっては場が持たないようにも感じます。
大きく音楽が流れる中での52小節のヴァイオリンのスタッカートの強調は大きなアクセント。73小節のクレシェンドから一転してピアノに落ち着く部分は美しいものです。

整然きっちりの第三楽章では194小節からの主題再現のヴァイオリンが柔らかな響きで迫ります。速いパッセージの部分になると小編成のオケであること露わ。

第四楽章の5小節目のチェロ、コントラバスのスタカート強調は嵐の前の前触れの気配。
いくぶん冷めた演奏で、堂々としているものの旧盤と比べると勢いに欠けます。
コーダでは、終盤のトロンボーンの下降音型からの音の積み上げを経て405小節からのホルンの連打の1拍めのアクセント付加が非常に大きな効果を上げていました。

この演奏の手持ち音源は、日本コロンビアRL規格で出ていた日本初出の古いモノラルLPと国内盤CDです。

オリジナルはステレオ録音ですが、古いコロンビアのモノラル盤で聴くと固い盤質そのままの剛直な音で、聴いた印象がCDとでは全く別の演奏に聞こえました。
各楽器が鳴りきった豪快なほど男性的な演奏に聞こえ、フィナーレの豪快な迫力はなかなかのものでした。
(2013.07.17)