ハンス・クナッパーツブッシュ(1888 - 1965)」 ブラームスの盟友シュタインバッハに指揮法を学んだクナッパーツブッシュの第2番には5種の録音があります。 ・1944年 ベルリンフィル ライヴ録音 ・1947年 6月30日 スイスロマンド管弦楽団 ライヴ録音 ・1956年 10月13日 ミュンヘンフィル ライヴ録音 ミュンヘン ・1956年 10月18日 ミュンヘンフィル ライヴ録音 アスコーナ ・1959年 11月28日 シュターツカペレドレスデン ライヴ録音 他にシュターツカペレドレスデンとの本番前日のリハーサル録音もあります。 ・ミュンヘンフィルハーモニー管弦楽団 (1956年10月18日 スイス アスコーナ ライヴ録音) スイス、アスコーナ音楽祭におけるライヴ録音。同月13日のミュンヘンでのライヴ録音も残されています。 いかついクナの風貌からは考えられないほどの優しげで幸福感に満ちた演奏でした。 テンポ、リズム、フレージングの柔軟な動きの中に穏やかでどことなくユーモラス感の漂うどこの誰とも異なるブラームス。力強いベースの響きと内声部の独特の生かし方が印象的です。 第一楽章冒頭は穏やかに開始。66小節のsfからpへの変転も鮮やかで、第2主題の1小節前のヴァイオリンを長くのばし第2主題は遅いテンポでたっぷりと歌います。 118小節の後奏部ではぐっとテンポを落とし1拍めにアクセントをつけてドッコラショと持ち上げる部分や展開部のゴツゴツ感はクナならではのもの。 続く184小節からのホルンソロはかなり危ない気配です。 コーダの445小節で大きく落としながら、他の楽器がピアノのままの中で第一ヴァイオリンのみに大きなクレシェンド。ホルンソロが終わった447小節で再び大きなパウゼ。 停滞なく淡々と進む第二楽章は神々しいまでの幸福感に満ちていました。 12小節目4拍目のチェロの動きを大きく強調し、表現の幅に大きなふくらみを加えていました。30小節のヴァイオリンにわずかなポルタメント。 44小節のディミヌエンドで大きくテンポは落ちていき、その先の微妙な間が絶妙。 87小節からのクライマックスでは巨人のような歩みの中で、音楽は巨峰を仰ぎ見るような威容として姿を現します。 第三楽章ものびやかで幸福感に満ちた演奏でした。アクセントをつけながらの遅いテンポのプレスト・ノン・アッサイなどは、素朴な農民舞曲のようでした。230小節のチェロの単純な音の延ばしの強調も意味深いものがあります。 第四楽章は柔らく遅い開始。ティンパニのドタドタ感とリズムの打ち方がどこともなくユーモラス。50小節めから少しずつ加速していきます。 243小節の再現部前のゆっくり感と281小節のlargamente のトウトウとした流れは巨匠の風格。 コーダに入ると唐突に加速。388小節直後の大ブレーキと続く大きなタメには驚きました。 余裕の中に遊び心満載の演奏でした。曲の本質に合わせて解釈を変化させるクナの至芸を堪能。オケのメンバーが興に乗っているのが伝わってくるようです。 今回聴いたのはスイスのERMITAGから出ていたCDです。モノラルとはいえ比較的良好な音で、管楽器奏者のブレスの音も聞こえまました。多少残響を付加しているようです。 (2013.11.12) |