「ブラームスの2番を聴く」6・・・・・初期の録音 マックス・フィードラー
「マックス・フィードラー(1859 - 1939)」
ドイツのツヴィッカウ生まれ、父からピアノを学んだ後にライプツィヒ音楽院に入学。ピアノ、オルガンを学び1888年からハンブルク音楽院教授となり後に院長となる。
ハンブルクフィルの指揮者の後、ロンドン響、ボストン響の首席指揮者、エッセン市の音楽総監督を歴任。

フィードラーはハンブルク時代にブラームスと接触があり、ブラームスの権威と言われました。
ブラームスは、交響曲第2番、第4番、大学祝典序曲、エリー・ナイの独奏でピアノ協奏曲第2番や、ヴァイオリン協奏曲の録音があります。他に交響曲第3番の私的な録音も存在します。
http://www.numakyo.org/cgi-bin/bra3.cgi?vew=52

・ベルリンフィルハーモニー管弦楽団
(1929年     ベルリン スタジオ録音)

交響曲第3番、第4番の感想を書くときにも感じましたが、マックス・フィードラーの演奏は、暗く重い音色と予測不可能なテンポの変化が特徴の粘着気質のスタイルです。

この演奏は腰の重いテンポ変化が一見デリカシーに欠け無骨な印象を与えますが、明るさの中に秘めたブラームス独特の憂鬱を見事に音化した稀有の演奏だと思います。

第一楽章冒頭からこれぞブラームス、と思わせる重心の低い充実した響きで始まります。
44小節からの滑らかな第一主題と詠嘆の第2主題の対比も見事。
ブラス群の暗い音色はこの頃のベルリンフィルの特徴でしょうか。134小節のフォルティシモ部分にティンパニのトレモロ加筆。

この直後からテンポを上げドラマティックに展開していきます。
171小節からのppで動くヴァイオリンの下を支えるヴィオラとチェロのピチカートも意味深く、225小節のトロンボーンとチューバのffで動く動機の絡みでぐっとテンポを落とし230小節から急速に加速。その後290小節での突然の大ブレーキなど、今では考えら得ないような展開が待っていました。

第二楽章は遅めのテンポますます音楽は粘ります。ロマンティックな流れに身をゆだねて溶けてしまいそう。最後の小節の静かな余韻も印象的。

第三楽章の細かく動くプレストアッサイは感情を排し淡々と進行。
194小節へのTempo Tヘ向かう190小節からの自然な減速は見事。
最後の4小節直前のフェルマータの休止を長く取る終わり方も独特でした。

第四楽章では何かに憑かれたように熱っぽく進みます。速めのテンポ。展開部からむくむくと巨大な音楽に膨れ上がり再現部でさらに着火、火を噴く壮絶なクライマックスを築き上げていました。
コーダに差し掛かる352小節のトロンボーンがリズミックに動く部分では、いきなりテンポを大きく落とす部分など意表を突く表現目白押し。

演奏を聴いた後には、フィードラーの毒気に当てられたような感じでどっと疲れました。
第三楽章終盤の絶妙なテンポの変化を聴くと、フィードラーがブラームスを得意としていたがよく判ります。
さすがのベルリンフィルもフィードラーの予測のつかぬ棒にやっと付いている印象で、多少の乱れがありました。

今回聴いたのはビダルフの復刻CDです。フィードラーの残したブラームス録音を全て収録していることで貴重です。録音状態は年代相応の状態。
(2012.06.19)