「フリッツ・ブッシュ(1890 - 1951)」 ヴァイオリンのアドルフ、チェロのヘルマンとともにブッシュ3兄弟の長男として主にドイツやイギリスで活躍した名指揮者。ドレスデン国立歌劇場やイギリスのグライドボーンで音楽監督を務め数々のオペラの歴史的な名公演をなしとげた名匠。 ブッシュは、ケルン音楽院でブラームスが自分の作品の演奏者として最も高く評価していたフリッツ・シュタインバッハに指揮を学びました。 実力に比べて残された録音が少ないですが、ブラームスの録音は交響曲第2番と第4番、悲劇的序曲の録音があり、交響曲第2番は2種類の録音があります。 ・ドレスデン国立歌劇場管 1931年 放送用ライヴ録音 ・デンマーク放送響 1947年 スタジオ録音 ・デンマーク放送交響楽団 (1947年 スタジオ録音) http://ml.naxos.jp/work/670352 これは凄い演奏です。端正にしてきっちり正確なリズム感の中で、細部ではテンポは柔軟に動き音楽がよどみなく進行していきます。 ブラームスの自作の指揮は楽譜の指示に捉われない自由なテンポとフレージングであったそうですが、ブッシュの指揮するブラームスは、まさにこれをそのままを具現した演奏と言えそうです。 第一楽章冒頭から深い森を連想させるホルンの響き、続くオーボエはスタカートを強調。 ワルツのように優雅な第2主題では下で支えるコントラバスの一拍めを僅かに強調。 126小節から自然に加速していき、続く管楽器のシンコペーション部分のスピード感も見事。変幻自在にしてさりげない変化の妙。 370小節の木管楽器群による第二主題の後半でヴァイオリンに主題を受け渡していく部分では、ブラームスが仕掛けた音型の変化を聴き手に分かりやすく提示。 第二楽章では清潔感と高輝な30小節からのヴァイオリンの旋律の4拍めで微妙なルバート。56小節からのフォルテで動く部分の厳しさも印象に残ります。 第三楽章の抑制の効いた淡々とした表現。プレストの厳しさもコントロールされたものです。 第四楽章は極めて速いテンポで、デモーニッシュなまでの怒涛の動きを聴かせます。 第2主題でもテンポは落とさずそのまま突っ走ります。 コーダでは269小節からの低音弦楽器の重量感のある響きの上に、輝かしいまでの歓喜の大爆発。 デンマークのオケの技量は他の一流オケと比べても聴き劣りはしませんでした。 オケの温かで柔らかな音は、ブッシュが音楽監督だったドレスデン国立歌劇場のオケと共通した響きです。 今回聴いたのは2002年にEMIミュージックから出ていた「20世紀の不滅の大指揮者たち」シリーズのCD2枚組と、デンマーク放送管の創立75周年記念CD2枚組です。 音はユニバーサル盤が明らかに優れています。 75周年盤はダットンラボラトリーによるものですが、内声部が聞き取れず高音強調型のキンキンした響きが気になりました。 (2012.11.27) |