・北ドイツ放送交響楽団 (1953年1月8日 ハンブルク 放送用ライヴ録音 ) ブラームスの故郷、ハンブルクのオケのライヴ。 落ち着きが感じられる威風堂々とした演奏。オケの透明でナチュラルでありながら男性的で重厚な音が印象に残ります。 ただ終盤で緊張力が弛緩する部分があり、きっちりとした演奏ですがシューリヒトとしては平凡な出来。 第一楽章冒頭は止まりそうなほど遅く開始。 主部でテンポを速め、3拍めを早めに採るシンコペーションのスピード感と、充実した低音はウィーンフィルとの演奏とは異なる魅力があります。 展開部の迫力などたいしたものです。 270小節のクラリネットとファゴットが重なる部分で減速。290小節の再現部の導入箇所でテンポをぐーと落とすのが特徴的。 フルートの経過部分で335小節のコントラバスの一音をさりげなく強調。 第二楽章のチェロの大きな歌と緊張感はスタジオ録音と共通していました。再現部後半の嵐のような盛り上がりはすさまじく、優雅でソフィスケイテットな第三楽章はゆっくりと水が流れるようなオーボエソロのレガートが印象的。 各木管楽器の受け渡しも見事で、重厚な音なのに音楽に軽さが感じられるのがシューリヒトのマジック。 188−190小節の、8分の9拍子から4分の3拍子に変化する部分のテンポの落とし方も名人の域。 第四楽章は終始冷静で物足りなさを感じるほど。第2主題でテンポを落とします。 音楽は絶えず自然体ですが、ウィーンフィルとのスタジオ録音とはどこか雰囲気が異なります。終盤では気力が萎えたように音楽が停滞する瞬間がありました。 前半の若々しさと溌剌とした迫力が最後まで持続しないのが惜しいと思いました。 聴いていて本当にシューリヒト?と感じるところも多く、シューリヒトの他の録音に比べると異質な演奏でした。 今回聴いたのはURANIAから出ているRM11.905というCDです。 音は比較的明瞭ですがRESTRATION SYSTEMとの表示があり、疑似ステレオ化しているようです。 (2013.01.20) |