「ブルーノ・ワルター」(1876〜1962) ワルターのブラームスの交響曲第2番は、2種のスタジオ録音による全集のほかいくつかのライヴ録音があります。 ・NBC響 1940年 ライヴ録音 ・フィラデルフィア管 1944年 2月 ライヴ録音 ・ベルリンフィル 1950年 ライヴ録音 ・ニューヨークフィル 1951年 ライヴ録音 ・ニューヨークフィル 1953年 スタジオ録音 ・フランス国立放送管 1955年 ライヴ録音 ・CBC交響楽団 1958年 リハーサル映像 ・コロンビア交響楽団 1960年 スタジオ録音 ・ フィラデルフィア管弦楽団 (1944年2月12日 フィラデルフィア アカデミー・オブ・ミュージック ライヴ録音) ワルターがナチスからの迫害を逃れてアメリカへ渡った直後のライヴ。 トスカニーニと並んでフィラデルフィア管の客演指揮者だった時期の録音です。 今回聴いたのは当日の演奏会の模様を全て収録したCDで、最初にアメリカ国歌が演奏され、続いて「悲劇的序曲」と交響曲第2番が収録されているのが戦時下であることを強く印象付けます。 静と動との対比が大きく感情の起伏の激しい演奏でした。 終楽章では何かがぷっつんしてしまったようで、幾分暴走気味となりました。 第一楽章冒頭はふくよかで穏やかに開始。44小節から気分を切り替え激しく音楽は揺れ動きます。182小節の展開部ではぐっとテンポを落とし減速しながら大きな嵐を迎えた後、テンポを早めながら静穏の世界へ。 再現部に入ったところで、292小節の3番トロンボーンソロが吹く冒頭のテーマを強調し476小節の intempo ma piu tranquillo 部分で極端にテンポを落としていました。 第二楽章は非常に遅いテンポですが、この楽章は特にピッチが低いのでアセテート盤の回転数を低く再生してCD化してしまった可能性があります。 フィラデルフィア管の美しく艶のあるチェロの音が印象に残ります。 第三楽章は木管楽器のフランス風の華やかな響きを強調、フルートの明るく朗々とした響きは名手キンケイドでしょうか。 第四楽章冒頭の何者かがうごめくような不気味さで開始。23小節から感情が爆発し阿修羅のごとく荒れ狂います。 56小節のフォルティシモでは、58小節から急速に音量を落とし第2主題再現の前の74小節めのピチカートを強調しつつ、ぐっとテンポが落としていきます。 この部分にはトスカニーニの影響が聞き取れますが、テンポの動きが急で落ち着きのなさも感じます。 80小節の主題再現の前の突然の大ブレーキは、ワルターの他の演奏では聴かれないもの。 310小節から加速していき394小節からさらに加速、最後はめちゃくちゃな速さとなりアンサンブル崩壊寸前をようやく踏みとどまった趣。 華やかでカラフルなフィラデルフィア管の響きが特徴的で、楽天的な幸福感に満ちたブラームスとなっている部分と、第2楽章87小節からのフォルテの動きや終楽章後半の荒れ狂ったかのような加速のように悲劇的な凄愴感が漂う部分が共存した演奏でした。 今回聴いたのはワルター協会の音源からWINGがCD化したものです。 戦時中のアセテート盤から直接復刻したもので、レンジも狭く針音も聞こえ音はよくありません。第4楽章の163−165小節で欠落が有ります。 (2013.02.17) |