「ブラームスの2番を聴く」17・・・・・・戦前派巨匠の演奏 ワルター その2

・ ニューヨークフィルハーモニック
(1953年12月24日  ニューヨーク30番街スタジオ   スタジオ録音)
1951年から53年にかけて録音された交響曲全集録音中の1枚。
若々しいスピード感とスケールの大きさの中にしみじみとした落ち着きを感じさせる演奏でした。ワルターの残された録音の中でも屈指の名演。

第一楽章冒頭から確信に満ちた手慣れた余裕が感じられます。
137小節からのシンコペーションの加速からのスピード感、163小節の旋律を弦楽器から木管楽器の受け渡し部分でわずかなテンポの落とし具合など鮮やかものです。
時々音楽を振り返り振り返り進むような趣ですが停滞感は感じられません。

第二楽章も穏やかで美しく内省的なブラームス。
最初のチェロの旋律が後のコロンビア響とのステレオ録音とは格段に異なる生命の宿ったような実在の響きです。
33小節からの8分の12拍子のワルツ風の箇所では自由に遊び、55小節の1拍めfpを強調し、音楽にズシンとした重みを加えていました。
62小節のオーボエの呼吸の動きに合わせ、弦楽器群がぴたりと合わせていく部分などすごいものです。これはワルターの指示というよりもオケの自主的な動きのように思います。
熱き想いとクラリネットの深い響きも印象的。

第三楽章ではプレストの重量感も見事。コーダ前の218小節直前にわずかにテンポを落とし、続くフェルマータは短めとし、余韻を保ったまま終結のピチカートを迎えます。

第四楽章は、小気味よいほどの若々しさ溢れる歓喜の爆発。
217小節からの木管楽器群の溶け合った音色などなかなか聞かせます。236小節からの再現部でのバスの雄弁さが次第に大きな効果を生み出し、音を割ったホルンの強奏、コーダの猛烈な加速も凄まじくトロンボーンの最後の和音もばっちり決まっていました。

ワルターの気迫がオケに乗り移り、オケの自発性に任せながら終楽章に向かって音楽が高揚していくのが見事な名演。

今回聴いたのは1970年代にCBSソニーから出ていたLPです。53年の音としては標準的なものですが、NAXOSのNMLと比べると高音部分が幾分ハイ上がりだと思いました。
(2013.05.10)