・フィルハーモニア管弦楽団 (1955年5月24,25日 ロンドン キングズウェイホール スタジオ録音) ベルリンフィルの芸術監督就任直後の録音。 カラヤンのフィルハーモニア管弦楽団とのブラームス録音には3番を除く3曲のスタジオ録音があります。 いずれも最初にモノラルとして発売されましたが、2番と4番はステレオ録音も残され、 特に第2番のステレオ盤はLPでは発売されず、CDがステレオ初出だったと思います。 1955年のフィルハーモニア管との録音の大部分はモノラルですが、 このブラームスの第2番のほかは、ベートーヴェンの交響曲第8番、第9番。モーツァルトの交響曲第39番、ハイドンの主題による変奏曲は実験的なステレオ録音が残されました。 ベルリンフィルという最上の楽器を手にいれた直後の録音だからでしょうか、美しく幸福感に満ちたブラームスになっています。 その分、後のカラヤンのブラームス演奏に聴かれるような凄みのあるピアニシモや劇的な迫力と重厚さは希薄ですが、ブラームスの交響曲第2番の曲想には合っているのかもしれません。 曲全体で活躍するホルンソロは私にはデニス・ブレインではないように思います。 (なんとなくブレイン独特の余裕を持ったのびやかさがこの演奏には希薄のように思いました。) 第一楽章冒頭のチェロとベースの入りからホルンを経て木管群への受け渡しへの一連の流れが非常に素晴らしく、肩の力が抜けたしなやかな滑り出しで自然にブラームスの世界に入っていきます。 比較的遅めのテンポ。 コントラバスのピチカートとティンパニのボンという一発のあとに第二主題が展開していく直前の39小節めの一瞬のパウゼも絶妙のタイミングでした。 リピート無し。 テンポをゆっくり落としながら入ってくるオーボエの音も実によい音。 410小節から加速して情熱的に終止。 第二楽章での弦楽器群が歌中で、ヴァイオリンの長く伸ばした余韻の美しさが印象的。 78から80小節にかけてコントラバスを強調しながら大きなクライマックスを築いていました。 可憐な第三楽章は、ここでもオーボエソロのうまさが印象に残ります。 194小節の再現部のあたりのヴァイオリン群の羽毛のような軽やかな動きも魅力的。 最後の4小節での管楽器から弦楽器への受け渡しもうまいものです。 第四楽章も軽やかでスマートな開始。 スピード感もあり、楽天的なこの曲の雰囲気には良く合っていると思います。 オケは無色透明な蒸溜水のような響き。 音楽運びは軽いストレートタイプで進行。 少ないテンポの動きの中でのレガートの多用に、あたかも幸福感と美しさに酔っているような印象を受けました。 今回聴いたのはワーナーミュージック・ジャパンから出ているカラヤンがフィルハーモニア管を振ったブラームス演奏を集めたもの。 オマケでベルリンフィルとの1976年録音の「ハイドンの名による変奏曲」が入っています。 なおフィルハーモニア管との1955年録音の「ハイドンの名による変奏曲」も収録されていますが、こちらはモノラル。(後にステレオテイクが発見されました。) この交響曲第2番録音はモノラル末期の実験的なステレオ録音で、ステレオ感はあまりありません。 鈍い録音のためブラスとティンパニの音が全体の響きの中に埋没してしていました。 (2017.07.30) |