「ブラームスの1番を聴く」13・・・・初期の録音 メンゲルベルク その2
・アムステルダムコンセルトヘボウ管弦楽団
(1940年10月13日 アムステルダム コンセルトヘボウ ライヴ録音)

コンセルトヘボウでのライヴ録音。この日はアンドリエッセンのピアノでモーツァルトのピアノ協奏曲第19番とフランクの交響的変奏曲が演奏され、いずれも録音が残っています。

1つ1つの音を精密に組み立てていくのがチェリビダッケの音楽造りと共通しています。

しかしながら窮屈さは感じられず、緊張感を持続しながらのトスカニーニのような剛直さでドラマティクに展開していく第1楽章は非常に素晴らしいものでした。

このままのペースで全曲を通せばフルトヴェングラーの演奏に匹敵する大名演になったところですが、第4楽章の歌い方とテンポの揺れがあまりにも個性的なので、時代を超えた普遍性を獲得できていません。

指揮棒で譜面台をカンカンと短く叩くメンゲルベルク独特の儀式で始まります。

第1楽章のゆっくりとした序奏からドラマティックに展開。9小節目に大きなパウゼ。
大きく盛り上がったあとに出てくるpの部分はゆっくりめの傾向。
ティンパニの刻みが極めて正確で、これは相当な名人です。
303小節からの「運命」の動機が連発していく部分から音楽は大きく盛り上がります。
328小節のホルンにトランペットを重ねていました。

トスカニーニのような直截さはありませんが、音のひとつひとつに緊張感が漲り、厳しくも激しい音楽になっています。
502小節からのヴァイオリンがpに減衰する部分の張りつめた緊張感は凄いもの。

第2楽章の前にメンゲルベルクのライヴ独特のチューニングの音が入ります。
38小節からのオーボエソロの直前で大きくテンポを落とし、61小節からの弦楽器と木管楽器群との対話の部分でわずかに入るパウゼが雄弁。
ここでのティンパニが、テンポが大きく揺れる中で音楽を強く引き締めています。

最後のヴァイオリンソロのポルタメントは同時期のカラヤンの演奏と同じ奏者でしょうか、かなり濃厚にテンポを動かしているために1番ホルンが遅れ気味。


第3楽章リピートあり。寂しさと落ち着きの感じられる演奏でした。
45小節めからの木管楽器の下を支える16分音符の刻みの正確さはお見事。
中間部は羽毛のように軽く、スタッカート付加はスタジオ録音に共通。

第4楽章の物々しい序奏では2小節目に大きなポルタメント。
同じフレーズを2度目に繰り返す部分はテンポを速めています。
アルペンホルンの響きに入る前のティンパニのトレモロの表情が濃い。

ところが続く主題は流れた素麺を途中で引き戻すような独特の歌い方で、音楽の流れがぶつ切り状態。

185小節の主題再現部のティンパニの強打は決まっていました。269小節の木管にホルン付加。
後半は猛烈にテンポを速め、352小節からの木管にホルンを付加し盛り上がりますが、酔っているようなテンポの揺れに行方が定まらぬ不安定さが感じられます。
コーダはさらに猛烈にダッシュして金管群のコラールに大ブレーキ。
400小節の木管にもホルンを付加。

終わりの3小節では大きくテンポを落とし、あたかも1音1音噛みしめて叩きつけるよう。
最後の音を非常に長く伸ばし、終わった後は観客の大歓声。

気合いの入り方が尋常でない演奏で実演で聞けばさぞ興奮できたと思いますが、第4楽章のあまりにも個性的な動きにはちょっと抵抗を感じました。

今回聴いたのは国内盤LPです。1940年代の音としては良い音だと思います。
(2016.04.15)