「ブラームスの1番を聴く」17・・・・初期の録音 トスカニーニその2
・NBC交響楽団
(1940年 5月6日 カーネギーホール 放送用ライヴ)

オールブラームスプロの演奏会ライヴ。

この時はセレナーデ第1番の第1楽章と、ホロヴィッツをソリストに迎えたピアノ協奏曲第2番も演奏されました。全ての録音が残っています。

第1楽章リピートなし。第3楽章リピートあり。

細部まで彫琢された造形と高度に結晶化された純粋な響きが全曲を支配。
厳しくも緊張感に満ちた素晴らしい名演でした。

トスカニーニの棒にピタリと付けるオケの反応も3年前と比べて格段の進歩です。

第1楽章序奏から速めのテンポでキリリと引き締まった劇的な開始。
126小節のエスプレーシヴォの優しげな表情との対比も見事。
運命の動機が絡み合って盛り上がる300小節からの緊張感が素晴らしく、459小節で幾分テンポを落としながらの澄んだ弦楽器の響きの中での終結も印象的。

第2楽章はよく歌う演奏で、随所にトスカニーニの歌う声が聞こえてきます。
17小節からのソロオーボエは10小節めのヴァイオリンと同じようにスタッカート付加。
80小節からのpからディヌエンドから続くエスプレーシヴォで減速感が絶妙。
終結部のソロヴァイオリンが最後に音程がフラット気味になるのは録音に原因があるのかもしれません。

速いテンポで走り抜ける第3楽章には、インターバルなしに第2楽章からほぼそのまま入り、旋律が弦楽器から木管楽器に移るとき微妙にテンポを落とします。

第4楽章冒頭の弦楽器が大きく膨らむ頂上でのティンパニのイッパツから2小節目のfpへ移行するタイミングと音量の変化が名人の域。
荘重でありながら、アーベントロートのような重さを感じさせないのがトスカニーニの凄いところです。

続くピチカートでは、あたかも生死を賭けた剣豪の立ち合いのような緊迫感を漂よわせつつ、続くアルペンホルンのホルンソロで大きな世界が広がります。

主部はゆっくりとした落ち着きの中で自然な呼吸で進行。
120小節目から徐々に加速。
各声部が精密機械のように動きながら下で支えるコントラバスが雄弁。
終盤に向かって徐々に巨大な建築物が生成していくかのように発展していきます。
269、272小節の木管群にホルン付加。
良く歌うコーダは壮大に盛り上がり360小節からの金管のコラールにはティンパニに派手に加筆。終結部447、449小節のドンタタドンタタにもティンパニ付加。


今回聴いたのはNAXOSが出したCD2枚組で、当日のコンサートの模様を放送アナウンスも含めて全て収録したものです。
アセテートディスクからの復刻ですが各楽器の音はバランスよく収録されていました。

(2016.12.05)