「クレメンス・クラウス(1893 - 1956)」 ウィーンに生まれ父は貴族で母は女優。クラウスにはハプスブルク家の私生児という話もあり、典型的なウィーンの上流階級のヒト。 ウィーン少年合唱団に所属した後ウィーン音楽院に学ぶ。 ドイツ、オーストリアの地方歌劇場の指揮者で経験を積み、ウィーン国立歌劇場、ベルリン国立歌劇場、バイエルン国立歌劇場の総監督、ウィーンフィルの常任指揮者を歴任。 ウィーンフィルのニューイヤーコンサートはクラウスが始めました。 貴族的な容姿と育ちの良さもあり、ウィーンで最も愛された指揮者だったかもしれません。 クラウスのブラームスはこの第1番の他に第3番のスタジオ録音があるだけです。 ・ブレーメンフィルハーモニー管弦楽団 (1952年 3月13日 ブレーメン die Glocke,Grosser saal ライヴ録音) クラウスとしては不遇な時代の戦後のライヴ。この演奏の2年後に失意のうちにメキシコで客死しています。 きわめて情熱的で荒削り、クラウスがウィンナワルツで聴かせるウィーン風の洗練された雅びさとは対照的な演奏でした。 速めのテンポの中でかなり即興的な動きがあります。 オケが非力でクラウスの棒に合わせきれずにアンサンブルがかなり乱れます。 第3楽章では冒頭のクラリネットソロが途中で落ちていました。 第1楽章序奏はドラマティックな開始。リピートなし。 主部に入ってからの急加速はかなり唐突。 演奏全体にテンポの不自然な揺れが多く聴いていて不安定さを感じさせます。 第2楽章では46小節からのオーボエとクラリネットのソロの受け渡し部分でぐっとテンポを落とし、続くクラリネットはかなり自由にロマンティックに歌わせています。 リズムの刻みと造形はしっかりしていますが、強弱の差はあまり感じません。 第3楽章は速めのテンポで進みます。 冒頭でクラウスの棒に迷いがあったのでしょうか、速いテンポのクラウスの意図に反してクラリネット奏者が倍のテンポで反応したために、ソロが転んで8小節目から落ちてしまいました。 リピート前のホルンの8分音符もヨレヨレでかなり危ないものがあります。 第4楽章序奏の力強い音の流れには緊張感が有りこれは良い雰囲気です。 アルペンホルンの部分ではオケに力が入りすぎて、ホルンの音が震えているようにも聞こえました。主部に間を置かずに突入。 有名な主題では音を短めに切り上げて健康的で楽天的に歌います。 78小節からの木管群への受け渡しから加速。 268小節のホルンは木管と重ねていませんでした。 後半は極めて情熱的で370小節からは急加速。 最後の10小節の猛スピードは興奮しすぎだと思います。 きっちりアンサンブルを整えるというよりも気の向くままに自由に歌わせた演奏。 聴いていて面白い演奏ではありますが、オケが非力なためにクラウスの意図が十分に音になっていないようです。 今回聴いたのはTAHRAから出ているCD。この時期の音としては良い音でした。 (2017.05.04) |