「オットー・クレンペラー(1885 - 1973)」 ドイツ領ブレスラウ生まれ。マーラーに気に入られプラハのドイツ歌劇場やハンブルク国立歌劇場の音楽監督に推薦される。1927年からベルリン・クロールオペラの総監督。 後にベルリン国立歌劇場総監督に就任するもユダヤ人のため職を追われ、アメリカへ亡命在欧時に指揮台から転落し頭を打ち脳腫瘍となってしまい身体の自由が聴かなくなってしまいました。渡米後ロスアンジェルスフィルの常任指揮者となりますが、脳腫瘍が悪化、サナトリウムに入ります。 その後全く仕事がなくなってしまい、生きながら過去の人となってしまいましたが、強靭な精神力で戦後再び復活。 ブタペスト歌劇場の指揮者を経て、フィルハーモニア管の常任指揮者に就任、レパートリーの大部分の録音を残すという幸運に恵まれ、晩年の巨大な音楽を後世に残すこととなりました。 クレンペラーはフィルハーモニア管の常任指揮者時代に、EMIにブラームスの交響曲全集の録音を完了しています。 ・1928年 ベルリン国立歌劇場管 スタジオ録音 ・1954年 フランス国立放送局管 ライヴ録音 ・1955年 ケルン放送響 ライヴ録音 ・1956〜1957年 フィルハーモニア管 スタジオ録音 ・ベルリン国立歌劇場管弦楽団 (1927年12月15,20日、1928年1月26,27日 2月3日 ベルリン スタジオ録音) 若き日のクレンペラーのクロールオペラ総監督時代の録音。 現代的で端正、すっきりとまとめた演奏でした。 同時代のワインガルトナーの上品さやマックス・フィードラーらの野武士のような野性味とは異なるスタイルで、とても20年代の録音とは思えぬほどスタイリッシュでカッコ良い演奏でした。 第一楽章のすっきりとした序奏からして感情を殺してひたすら冷静に進みます。 序奏の29小節目のffに向かって徐々に加速。 テンポの揺れポルタメントもなし。リピートもなし。 生真面目なほど正確無比で、弦楽器のトレモロの音の粒まできっちりと合わせたかのよう。 320小節へのクライマックスへ向けての長い上り坂と、終結部へ向かう480小節あたりでは大きな変動を見せながら悲劇的に高揚していきます。 第2楽章は超スローのドルチェの音楽。 オケ全体の透明な響きの中で、ヴァイオリンソロの大きなヴィヴラートポルタメントに違和感がありました。最後の小節のトランペットにタイなし。 第3楽章は速いテンポにしてロマンの香り。86小節の弦楽器にスタッカート付加。 リピートあり。最後の小節のチェロとコントラバスはあっさりと終結。 第4楽章序奏の弦楽器のピチカートが表情豊かで、アルペンホルンの響きに向かって加速しいきます。 落ち着きの中でのアレグロノントロッポの歌から次第に加速、94小節から全速力。 184小節の主題再現部はゆったり歌い220小節目のアニマートから急に速くなる。 弦の速いパッセージなど凄い超絶技巧でした。 これはあまりにも凄すぎるので復刻時に再生の回転数を間違えたのかもしれません。 289小節のアルペンホルンの再現部分でもテンポは落とさず不動の構え。 コーダでの加速もきっちり明晰な計算が働いていました。 当時としては斬新なスタイルで、時代を先取りしていたかのような現代的なすっきりとした演奏ですが、起伏の大きさも感じられ後の巨匠ぶりを予見させる部分も感じました。 クレンペラーは若い頃から傑出していた才能のある指揮者だったのだと思います。 このころからわが道を行く頑固さが垣間見えるのが面白いと思いました。 今回聴いたのはNAXOSのミュージックライブラリーにアップされていた音源です。 SPの切り替わりで音質が突然変化する部分もありますが、年代を考えれば良い音だと思います。 (2017.05.22) |