Introduction
沼響第31回の定演のメインはブラームスの交響曲第1番でした。
沼響としては18年ぶり2回目です。

この聴き比べコラムは、沼響が定演で取り上げる曲を演奏前の予習も兼ねてアップしているわけですが、最近業務多忙につき記事の更新は滞り気味でして、結局モタモタしている間に定演が終わってしまいました。(^^;

一昨年のドヴォルジャークの交響曲第8番の時のように、そのままスルーして連載を見送ろうと思ったのですが、ブラ1を演奏してみていろいろなことが判ってきたということと、このコラムでブラームスの交響曲の第3番(102種)、第4番(40種)、第2番(23種)を取り上げていることもあり、第1番でブラームスの交響曲全4曲コンプリートとなるので遅ればせながら始めることにします。

連載中のものをもっと進めろとか、完結させないのか・・・
といった声も聞こえそうです。

しかしながら過去の巨匠の未発掘音源や、活躍中の演奏家の録音が続々と出てきている現在の状況を考えると、ある特定の時点で連載を完結するのは意味がないように思います。

他の連載が遅々として進まない状況で新しい曲のコラムを立ち上げるのも気が引けますが、少しずつアップしていこうと思います。

以下はこの曲にまつわる私的な思い出です。

私がブラームスの交響曲第1番を初めて聴いたのは小学生の時。

家にあった小学館が出していたステレオ「世界の音楽」という全15巻の名曲紹介の書籍の中の、渡辺暁雄が解散前の旧日本フィルを指揮した演奏でした。

この演奏はこのシリーズのために録音されたもので第4楽章のみの収録でした。
http://www22.ocn.ne.jp/~yosijyun/houjin/stereo.htm

録音年の記載はありませんが、録音ミクサーが若林駿介、録音ディレクターが菅野沖彦で収録場所は東京文化会館大ホール。

今聞いても非常に良いバランスのステレオ収録で、演奏も同じシリーズ内に収録されているマーラーの交響曲第4番と並ぶ名演です。

渡辺暁雄さんのブラームスの交響曲録音では、日本フィルの創立50周年記念BOXのライヴが発売されるまで、正規の形で残るのはこの演奏だけだったと思います。

この演奏が私のブラ1の原点です。

その後この曲で強烈な衝撃を受けたのは、1975年にNHKの招きでカール・ベームがウィーンフィルを率いて来日した時の演奏でした。

この時はNHKFMで生中継されましたが、東京圏以外ではモノラルだったのを覚えています。
その後ステレオで再放送され、歴史的な名演としてLP化、CD化さらにはDVDにもなっていますが、結局生中継で聴いた時の音の生々しさには及びませんでした。

そしてもうひとつ強烈な印象が残っている演奏があります。

それは1976年のザルツブルク音楽祭で、小沢征爾がドレスデン国立歌劇場管を振ったライヴ。
これもFMで放送されました。

気品のある素晴らしい音のオケを小沢征爾が豪快にドライヴした白熱の演奏で、非常に興奮したのを覚えています。
この演奏は、当時オープンリールテープに録音していたのですが、デッキが壊れてから聴く術がなくなってしまいました。

最近CD−Rの海賊版を入手することができましたが、音のレンジが狭く演奏の印象がずいぶんと変わってしまいました。


そして最近聴いた中では、1959年、バーンスタイン指揮ニューヨークフィルハーモニックのレニングラードライヴ。東欧、ソビエト楽旅の記録。

当初、指揮者のフリッツ・ライナーとシカゴ交響楽団が行く予定だったのが、ライナーが健康の不安を理由にキャンセル。

前年ニューヨークフィルハーモニックの首席指揮者となって人気急上昇中のバーンスタインとニューヨークフィルが代役となったものでした。

この時の最終公演のモスクワでショスタコーヴィチの交響曲第5番を演奏した時の作曲者と一緒に写った写真は非常に有名です。

この演奏は今まで聴いたどのブラ1よりもエキサイティングでした。

フィナーレ終盤など、指揮者もオケも興奮のあまり完全に造形が崩れていて、ほとんど曲の形になっていないほどです。

最後の音の長大な引き伸ばしもすさまじく、これほど我を忘れた壊滅的な演奏が記録されていたのも珍しいもの。
バーンスタインが存命であったならば、おそらく発売の許可がおりなかったのではないかと思います。

手持ち音源は160種を超えています。
他の曲の連載も抱えているので正直どこまで紹介できるのかわかりませんが、気長にやっていきたいと思います。




(2015.07.08)