今回はロンドン響との1939年録音。 ワインガルトナー3度目のブラームスの交響曲第1番の録音です。 ・ロンドン交響楽団 (1939年 10月18日 ロンドン、スタジオ録音) 以下は2回目の録音との演奏時間の比較です。 1939年 1928年 第1楽章: 11分 43秒 11分59秒 第2楽章: 9分 04秒 8分18秒 第3楽章: 4分21秒 4分11秒 第4楽章: 14分 30秒 14分54秒 第1楽章のリピートなし。第3楽章リピートあり。 ワィンガルトナーの解釈は若い頃に確立し、終生大きな変化はなかったそうです。 旧盤と基本的な解釈には大きな変わりはないものの、旧盤の大きな特徴だった第3楽章のチェロとコントラバスのピチカートからアルコへの改変はなく、譜面の指定のとおりピチカートで弾かせていました。 さらに旧盤では第3楽章のリピートはありませんでした。 以前の録音で聴かれた弦楽器のポルタメントがこの演奏ではすっかり姿を消しています。 全楽章が一定のテンポで流れていき、それでいて平板にならず品格も感じさせます。 淡々とした落ち着いた静けさとスピード感のほどよい共存が見事な名演だと思いました。 暖かで優しげな第2楽章と、毅然とした速いテンポで駆け抜ける第4楽章が印象に残ります。 全編で聴かれるクラリネットの音色の美しさが印象に残りました。 旧盤で特徴的だった第3楽章のチェロとコントラバスはここでは指定のとおりピチカート。 当時の録音はSPの1面の再生時間の4〜5分に合わせて、中断しながらの細切れの収録でした。 それにもかかわらずワインガルトナーの演奏は常に一定のテンポ感で緊張感も持続、録音の中断を感じさせずに音楽が澱みなく流れていくのが見事だと思います。 今回聴いたのは、アメリカのAllegroというレーベルから出ているブラームス交響曲全集の2枚組CDと、NAXOSのNMLにアップされているRADIEXというレーベルのものです。 Allegro盤は毎度のことながらノイズのカットが過剰で全体に薄いのっぺりとした響き。 さらに第4楽章の301小節で1拍欠落があり、音楽の流れが途切れていました。 一方のRADIEXのものは落ちついた響きで演奏の素晴らしさが充分伝わります。 (2015.11.10) |