・ベルリンフィルハーモニー管弦楽団 (1941年4月3日、7月29日 ベルリン スタジオ録音) 第二次世界大戦中の録音。この年にドイツはソビエトに侵攻しています。 この時期のアーベントロートは、ワルターが去った後のライプツィヒ・ゲヴァントハウス管のカペルマイスターの地位のかたわら、ライプツィヒ音楽院で教鞭を取り、ヘッセン州立管やフランクフルトのライン・マイン管の首席指揮者に就任するなど多忙な時期でした。 ベルリンフィルにもしばし客演し、1940年にはベルリンフィルのデンマーク楽旅にも同行しています。 第1楽章リピートなし。第3楽章リピートあり アーベントロート独特の、重厚で荘重な儀式のようなものものしさが特徴の演奏です。 1928年録音より遅く1950年録音より速いテンポ。 アーベントロートのブラ1演奏を何種か聴いてみると、一見即興的に聞こえる唐突な変化が実は全ての演奏に共通していました。 ある種型にはまった様式が定まると、そのパターンを繰り返していくルーティンさがアーベントロートの個性のようです。 第1楽章序奏10小節目からの重いバスの響きに乗ってポルタメントを伴ったヴァイオリンが歌います。アレグロに入ると音楽は軽くあっさりに変化。 253小節のフレーズで押しつけるように遅くなるのはアーベントロートの特徴。 テンポを緩めながら諦めにも似た終結部が印象的。 第2楽章になると、遅いテンポでありながら重厚さよりも清潔さが前面に出てきます。美しく歌う弦楽器に落ち着いた趣。 終結部のホルンとヴァイオリンソロの掛け合いでのヴァイオリンの甘いポルタメント。 第3楽章は軽いバスに乗って滑らかに歌う主題、木管楽器のフレーズを短めに区切り快速感を演出。 第4楽章では序奏のstrigendoの強弱の変化が非常に細かく、急かすようなテンポアップに風雲急を告げる緊張感。 アルペンホルンの響きのあとのコラールの遅さは荘重な儀式のよう。 主部はかなり遅いテンポで鈍重さを感じさせるほどです。 95小節のanimatoで突然早くなり徐々に加速。速くなったり遅くなったりとまるで寄せては引くさざ波のようです。 232小節目で雰囲気が突然変わるのは、古いSP盤の面が変わる継ぎ目部分だからでしょうか、ここで緊張感がプツンと切れました。 269,270小節の木管群の応答にホルン付加。 316小節poco esp.で大きく揺れ、コーダでは380小節からトロンボーンが加わる部分で大きく盛り上がり、同時にテンポを上げていくものの391小節で突然の大ブレーキ。 これはロンドン響との最初の録音にも共通していました。 今回聴いたのはVIRTUOSOというレーベルから出ているCDです。 1941年という録音年を考えれば音は良く採れていると思います。 (2016.01.31) |