「ブラームスの1番を聴く」11・・・・アーベントロート その3

・ベルリン放送交響楽団
(1955年5月15日 ベルリン コーミッシェ・オパー ライヴ録音)
第1楽章リピートなし。第3楽章リピートあり。
アーベントロート晩年のブラームス。

テンポを自由に変化させる即興的なアプローチは1928年のロンドン響との録音と共通しているものの、変化する場所と動き方はかなり異なっていました。

最初のロンドン響との演奏に比べてテンポはぐっと遅くなりました。
オケの重厚感も大きな魅力です。

ところが終楽章になると突然の変貌。
尻に火が付いたかのような我を忘れた狂乱の場と化します。

コーダに突入するとテンポは倍速になったと思いきや突然スローモーになるなど予測不可能な変化に聞き手は幻惑。


第1楽章の序奏はかなり遅いテンポ。
全編に諦観が漂い雄大なスケール感を保ちながら悲劇的に高揚していくのが素晴らしいと思います。
148−150小節のクラリネットとホルンの呼応部分でテンポを落とす部分はロンドン響との録音と共通。
252小節からの突然のブレーキと300小節目からの急加速と盛り上がりが特徴的。
1928年録音では聞こえなかったここでのティンパニがカッコよく決まっていました。
木管と弦楽器の有機的な絡み合い美しく、最後の小節のピチカートの重量感も良いと思います。


テンポの変化の大きな第2楽章も自由に節度を保って進行。
90小節からのホルンとヴァイオリンソロの直前の弦楽器の下降音型のテンポを落としながらの音量の減衰が落ち着きと静けさを感じさせて見事。
終結部のゆっくり連綿と歌うヴァイオリンソロと全オケののばしでソロは早くに消えていきました。



第3楽章は間奏曲的な休息の音楽。レガート多用でなめらかに行きます。
リピートのあと、中間部から冒頭回帰の経過部分のものものしさは続く終楽章の暗雲の予感。


第4楽章序奏は遅いテンポの混沌としたカオスの音楽。
これから何が起こるのか大きな期待感を抱かせますが、この暗さは度を越しています。

String  poco a pocoのピチカート部分など止まりそうなほど遅くなっています。
アルペンホルンが入る直前は猛然と加速。
有名な主題は最初の1音を長く伸ばし熱い響きで悠然と歌います。
しだいに加速、全合奏の95小節から猛烈な速さとなり、咆哮するトランペットも凄まじくもはや制御不能。

132小節のオーボエソロのドルチェ指示部分での突然のブレーキには驚きますが、今のところアーベントロートのブラ1の全て録音に共通しています。

後半はほとんど譜面の指定を大きく離れた自由なテンポ熱狂的な音楽。
完全にプッツンしています。

通常遅いテンポで演奏されるアルペンホルン回帰の289小節からをなだれ込むような速いテンポとしながら、突然倍のテンポに落とし、さらに急速にテンポアップしながらコーダに突入する部分など非常にスリリング。

通常の倍速のピウアレグロは5小節目で突然の大ブレーキ!
そのまま巨大なコラールを現出させた後の駆け抜けるような加速は実に強烈でした。
最後の音にティンパニのアクセント付加。

変幻自在のテンポの変化と熱狂、聴いた後に呆然とするような凄まじいフィナーレでした。


今回聴いたのはTharaから出ているCDです。モノラルながら音のバランスも自然な良い音だと思います。
(2016.02.21)