ブラームスの1番を聴く21 初期の録音・・・ストコフスキー
レオポルド・ストコフスキー」

ストコフスキーは、1920年代から30年代の速い時期に史上初のブラームスの交響曲全集を完成しています。

交響曲第1番はロンドンデビューの際に取り上げるなど、お気に入りの曲だったようです。

5種のスタジオ録音があり、1972年のロンドン響とのライヴはロンドンデビュー60周年演奏会のライヴです。

フィラデルフィア管    1927年         スタジオ録音
フィラデルフィア管    1931年         スタジオ録音 (未発売)
フィラデルフィア管    1936年4月       スタジオ録音
ストックホルムフィル   1939年         ライヴ録音 (第2楽章のみ)
全米青少年管       1941年         スタジオ録音
ハリウッドボウル響    1945年         スタジオ録音
フランス国立放送局管   1958年         ライヴ録音
フィラデルフィア管    1960年         ライヴ録音
ロンドン響        1972年6月14日     ライヴ録音
ロンドン響        1972年6月15日     ライヴ録音


・ハリウッドボウル交響楽団
(1945年 8月1日 ロアンジェルス、ハリウッドボウル スタジオ録音)

1946年にフィラデルフィア管弦楽団を辞任したストコフスキーは、全米青少年オーケストラやニューヨークシティ響の創設、一時はNBC響やニューヨークフィルの指揮者陣にも名を連ねるなど、いささか焦点の定まらぬ印象があります。

1945年にはハリウッド郊外で夏に開催される音楽祭のオーケストラ、ハリウッドボウル響の音楽監督に就任し、短い間にかなりの数の録音を残しています。

ハリウッドボウルとはハリウッド郊外にある収容能力2万人以上の巨大な野外音楽堂のことで、1927年に建設され、夏の間にクラシックのみならずジャズやポップスなどのさまざまなコンサートが開かれています。

ハリウッドボウル響は、この音楽祭に登場するオーケストラ。

実体はロサンゼルスフィルのメンバーを中心としたフリーランスの音楽家の集団であったようです。

当時はハリウッド映画が全盛の時であり、高額のギャラが得られる映画音楽の録音のために世界中から優秀な演奏家が集まりました。

ステレオ初期には指揮者のカーメン・ドラゴンやフェリックス・スラットキンらによる軽い音楽のまとまった量の録音が残されています。

米RCAへのSP録音。

劇的にして華やかなブラームス。
弦楽器の響きがかなりゴージャスでブラームスのイメージから遠いですが、ここまで徹底するとある種の説得力があります。
華やかさの中にも勢いと緊張感があるのが良いと思います。

劇的にして壮大、速いテンポで進む中でまるでチャイコフスキーのように響く瞬間があるのがユニーク。


第1楽章序奏は微妙に加速。111小節のヴァイオリン1オクターヴ上げていました。
157小節のp指示をfで開始するなど、音の強弱は作曲者の指定をかなり無視。
運命の動機が鳴り響く198小節あたりからテンポを落とし不気味な雰囲気を演出。


第2楽章の最初の弱音指示は無視し6小節めからのffとほとんど同じ強さ。
17小節でのオーボエソロはトスカニーニと同じようにスラーをスタッカート気味に吹かせます。
最後のヴァイオリンソロは控えめでした。
116小節からの5小節間はソロでなく、ファーストヴァイオリン全員で演奏させているようです。

第3楽章リピートなし。クラリネットソロ後の弦楽器の響きはマントヴァーニ・オーケストラのような甘き幸福な音楽が鳴っていました。
終結部はゆっくり減速。4小節前のヴァイオリンはオクターヴ上げ。

第4楽章序奏から豊麗な音が響きます。
Poco strigendのピチカートは最初から非常に速く、劇的な展開はあたかもワーグナーの音楽を聴く趣。アルぺンホルンを支える弦楽器も華麗なトレモロです。
主題では体育会系のさっぱりとした早いテンポ。
269,270小節のホルン、284小節のトランペットはホルンと同じ動きに改変。
301小節で音が欠落していました。
375小節コーダ猛烈な加速の後に407小節のコラールは倍のテンポでゴージャス。


今回聴いたのはCALAから出ていたCD。
復刻状態が良好で聴くのに十分な音質。
(2020.01.23)