・パリ音楽院管弦楽団 (1957年 ライヴ録音) クリュイタンスとしては珍しいライヴのベートーヴェンです。 この頃のパリ音楽院管弦楽団はシューリヒトを指揮者に迎えてベートーヴェンの交響曲全集録音を進行中でした。 この演奏と同じ1957年に、クリュイタンスはベルリンフィルと第7番をモノラルで録音しています。(1960年にステレオで再録音をおこなっています。) 最初からまるでドイツのオケのような重厚な音が響いていました。 一定のテンポ感はベルリンフィルとの1960年録音と共通していますが、ライヴらしき即興性と熱狂が魅力の演奏。 しかもフィナーレで驚きの改変があります。 第一楽章冒頭から堂々たる開始。フルートの明朗な響きはこれがフランスのオケであることを思い出させます。28−29小節の4拍めに軽いルバートをかけるのがお洒落。 89小節からのトランペットを強調させていました。 再現部前の加速なしはスタジオ録音と同じですが、直前で大きなリタルランドとティンパニの強打があります。コーダでの低音部の大きなうねりと巨大なクレシェンドは迫力十分。 この楽章の合間にクリュイタンスらしき声が入りますがフランス語のため意味不明。 ここで入念にチューニング。 第二楽章ではコントラバスのリズミカルな動きが格調高い中世の舞曲を彷彿させます。 中間部は比較的速いテンポ。211小節ではフォルティシモで高らかに主題の再現。 第三楽章の前でも入念なチューニング。 19,21小節のトランペットの付点2分を短く切らせています。 第四楽章も20小節まで不動のテンポ。120小節から140小節までのリズムは粘りますが、整然としてパワフルな音楽が展開。高まる興奮。 そしてコーダの終盤、438小節と440小節のトランペットの音は譜面ではG-Dなのですが、クリュイタンスはG-Fisと変えフォルティシモで吹かせています。 これで調性が変り曲の雰囲気がガラリと変わってしまいました。初めてこの演奏を聴いた時に思わず「あ!!」と声を上げてしまいました。あまりにも大胆な改変です。 快活で美しい演奏でリズミックな処理も見事ですが、フィナーレ最後のトランペットの改変が強烈で、他の部分の印象が吹っ飛んでしまいました。 今回聴いたのはディスクレフランから出ていたCDで、ベルリンフィルとのハイドンの交響曲第95番とのカップリング。音は放送録音のエアチェックのようです。 (2011.12.01) |