「シャルル・ミュンシュ(1891 - 1968)」 アルザス地方ストラスブールの生まれ。ミユンシュの家系はドイツ系の音楽一家でミュンシュが生まれた当時のストラスブールはドイツ領でした。 パリ音楽院でヴァイオリンを学び、ライプツィヒゲヴァントハウス管のコンサートマスターの後に指揮者に転進、パリ音楽院管(1938 - 1946)ボストン響(1949 - 1962)の常任指揮者。1967年に新たに創設されたパリ管弦楽団の初代音楽監督に就任したその翌年急逝。 ミュンシュの指揮者としての活躍の場はフランスが中心でしたが、フルトヴェングラーとワルター時代のゲヴァントハウス菅のコンマス経験もあり、ベートーヴェンやブラームス シューベルトなどの名演が残っています。 ベートーヴェンでは、スタジオ録音として第1,3,5,6,7,8,9番の7曲がボストン響(1、7番はモノラル)、他にロッテルダムフィルとの第6番が有ります。 ライヴ録音ではボストン響とでは第2番の1953年ライヴをはじめ第3、5,9番が複数、フランス国立放送局管との第4、7番、旧日本フィルとの第9が有り、交響曲全9曲の録音が残っています。 交響曲第7番には以下の4つの録音があります。 ・ボストン響 1949年 スタジオ録音 ・ボストン響 1954年 ライヴ録音 ・ボストン響 1960年8月 ライヴ録音 ・フランス国立放送管 1963年 ライヴ録音 ・ボストン交響楽団 (1949年11月19日 ボストン・シンフォニーホール スタジオ録音) ボストン響音楽監督就任直後の録音。 尋常でない熱気に満ち、目が覚めるような煌びやかさの中にどしりとした重量感のある名演でした。 管楽器はおそらく倍に増員、そして単に同じパートを倍加しているのではなく、新たなパートを書き加えているようです。 第一楽章冒頭和音からして強烈なエネルギーの放射が感じられました。序奏でのヴァイオリンの上昇音型のスタッカートの音のひとつひとつに強烈な力が満ちています。 主題がホルンで強奏される直前の88小節のフェルマータは、あたかも弓を引き絞るかのようにぐーと力を溜め、一挙に大きな力を放出し豪快に音楽は進行。 後半250小節からバスを強調しつつ猛烈な盛り上がりを演出します。コーダのコントラバスはゴウゴウとうねる凄まじさ。 第二楽章は51小節目の第二変奏から音楽は横に流れていきます。この楽章はオケの自発性に任せているようです。150小節の第四変奏から低音部を弱めとしていき、275小節最後の4小節で弦楽器をたっぷり歌わせていました。 第三楽章は竹をスパッと割ったような明快なリズムの中にも重厚な風格。中間部は速いテンポで進行。木管楽器の厚い響きはおそらく倍管に増員。 遅めの第四楽章は落ち着いた中にもテンションが異様に高く、さながらバッカスの饗宴。 主題部分のホルンは後半の部分を木管と同じく旋律化させていました。 192小節めから加速。ホルンからは聴いたことがないような和音が聞こえてきます。 コーダの大詰めの400小節からは、加速しながらホルンの音に上昇音型を付加していき手に汗握る大興奮の終盤を迎えます。 ライヴ録音のような尋常でない熱気が全体を支配し、あたかもフルトヴェングラーを彷彿させるようなデモーニッシュで巨大な演奏でした。 今回聴いたのは国内盤CDです。モノラルとはいえ音は残念ながら良くありませんでした。 (2012.02.03) |