「ベートーヴェンの7番を聴く」79 フランス系の指揮者たち3 ミュンシュその2
・フランス国立放送局管弦楽団
(1963年12月20日  パリ    ライヴ録音)

前年にボストン響の音楽監督を辞任しフリーとなった時期のミュンシュ客演時のライヴ。

気のむくままに即興的に動いた結果、アコーギクはボストン響のスタジオ録音と異なりますが、エネルギーの強烈な放射は健在。

第一楽章冒頭和音は太く柔らかい長めの音。木管の響きは完全にフランスの響きでした。
序奏の29小節あたりから木管と弦楽器が別テンポで進行していく細部にこだわらない大雑把さがあるものの、それでも立派な音楽になっていくのが大巨匠の芸でしょうか。

提示部のホルンの絶叫が始まる部分の堂々たる歩みが印象的。
270小節から急かすようにテンポを追い上げ299小節で大きくタメを作ります。
380小節からたたみかけるように加速しコーダに突入。
コーダの最初は遅い開始、コントラバスとヴァイオリンがミュンシュの棒に異なる反応をした結果微妙にずれていました。

第二楽章は、第二変奏で音楽の気分が変わります。第三変奏のffではヴィオラ、チェロのスタッカート強調。中間部は速いテンポ。150小節の第四変奏もそのままのテンポで突入していきます。180小節からさらに加速。
コーダは速いテンポで開始、242小節の弦楽器ののばしの部分で非常に遅くなり、275小節から大きなリタルダンドで終結。

第三楽章はミュンシュの特徴が良く出ている楽章で、ナイアガラ瀑布のようななだれ落ちるトリオのフォルティシモが凄まじく、59小節目のズバッとした思い切りの良いフォルティシモも印象に残りました。
2回目のトリオでは木管楽器に優しい表情を付加。コーダの4小節ののばしが非常に長く、粘りに粘ってねばり狙いを付けたかのように急転直下で終止。

フィナーレは遅めのテンポの中で、大きな塊となって迫るパワー全開のぶ厚いオケ響きがさながら豪快なバッカスの饗宴。
86小節からのpからfの移行はpからpのままとして息を潜めながら147小節再現部前のタンタのリズムの処理が個性的。180小節からわずかに加速、展開部から白熱し後半はタガがはずれたかの如く際限なく盛り上がり、400小節めのトランペットに強烈なクレシェンドを付加し聴き手にとどめを刺します。

今回はディスクモンターニュから出ていた初出のCDです。一応ステレオですが第一楽章後半で左右に音がフラついています。

(2012.03.04)