「カール・リステンパルト(1900〜1967)」 ドイツ北部のキール生まれ。父は天文学者で、幼いころ父が天文台長として赴任したアルゼンチンで幼少期を過ごしています。 ベルリンとウィーンで音楽を学び、ベルリンオラトリオ合唱団の指揮者。その後ベルリンで室内管弦楽団を創設。第二次世界大戦後の連合国占領下のベルリンでは、リアス室内管弦楽団、合唱団を指揮してモンテヴェルディからストラヴィンスキーまでの作曲家の録音も残しています。この頃ベルリンでのバッハのカンタータ全曲演奏で注目浴びています。1953年にザール放送局に招かれ、ザール室内管弦楽団を創設。 ザール時代のリステンパルトは、フルートのランパルらフランスの若手ソリストたちを招いてバッハの作品を中心に、ドイツ、イタリアのバロック音楽作品の数多くの録音をフランスのエラートやクラブ・ドウ・フランスに残しました。 リステンパルトのベートーヴェン交響曲録音は、第7番のほかに第3番「英雄」の録音があります。 ・南ドイツフィルハーモニー管弦楽団 (1960年代 シュトゥットガルト スタジオ録音) 米checkmateレーベルのドイツ録音。架空指揮者の録音が多いPILZ系のCDによく登場する南ドイツフィルですが、シュトゥットガルトに本拠を置く実在のオーケストラのようです。この演奏のLPジャケットの片隅に、シュトゥットガルトでの録音の記載がありました。 きっちりとした真面目なベートーヴェン演奏。室内楽的な精緻さを目指しているようですが、オケがリステンパルトの要求に充分に応えきれていませんでした。 第一楽章冒頭から薄い響きが気になります。ごく標準的なテンポで進行していきますが、主部に入る前の880小節めのフェルマータは短めで、音楽は淡白に流れていきます。通常アチェレランドする場合が多い274小節からの再現部への導入過程でも、テンポに大きな変化はありませんでした。 衒いのない穏健な表現ですが、コーダからの410小節からのコントラバスの大きなクレシェンドは効果的。 無心の境地で音を鳴らしているかのような第二楽章では、冒頭から一番チェロのバランスが大きいのが気になりました。バッハのような厳格な響きで鳴らす120小節からの弦楽器の絡みは美しく響いています。 なお178、189小節のコントラバスの8分音符は、譜面上では3拍めまですが、4拍めまで演奏させていました。 あくまでも明るく軽い第四楽章も頑固なまでに着実な歩み。146小節からのトランペットを強調するあたりから効果を狙う表現が現れます。310小節から加速させ、コーダでは木管楽器群のクレシェンドを強調。終結部のバスの明確な上下音型運動も効果的。 各声部をきっちり明確に鳴らしているバロック音楽のようなスクエアなベートーヴェン。極めてスタンダードな解釈で、ドイツで日常的に演奏されているベートーヴェンだと思います。 音楽に真摯に対決している姿勢は見えてきますが、オケのアンサンブルに詰めの甘さが散見され、リステンパルトの他の演奏ほどは楽しめませんでした。 今回聴いたのは米checkmateのLPです。LP最初期の標準的なステレオ録音の音。 (2009.11.18) |