・ウィーン交響楽団 (1957年2月18日 ウィーン 、ムジークフェライン ライヴ録音) ウィーン響常任指揮者時代のカラヤンのライヴ。 カラヤンは、この演奏会の一ヶ月前に、ベームの失脚により空席となったウィーン国立歌劇場の音楽監督のポストを手に入れています。やがてウィーンフィルへの客演の機会が増え、ウィーン響との関係は次第に疎遠になっていきます。 ウィーンフィルに比べると、現代的な響きと機動力を感じさせられるウィーン響ですが、カラヤン時代のウィーン響の音は、ウィーンフィル以上にウィーンフィルらしい柔らかな音を出していました。 第一楽章冒頭から柔らかでふくよかな響きで始まります。ムジークフェラインの豊かな響きの中で広がるウィンナーオーボエの柔らかで明るい音が印象的。余裕のある自然な音楽の流れが心地良く。ぐーと力を溜めて頂点で力をスーと抜いていく呼吸も見事。 最初のスタジオ録音ではトレモロにしていたオーボエソロ前の209小節のティンパニは譜面のとおり。 再現部後半からコーダへかけてテンポを上げていきますが、387、388小節のテンポ感が指揮者とオケでずれてしまい、389小節の弦楽器と管楽器の掛け合いが危うくなっていました。 その影響はコーダまで達し、399小節では1番、2番ホルンが揃って脱落。さらに一小節遅れてホルンが吹き始めて、一瞬止まりそうになるという大事故発生。 第二楽章は一転して極めて入念に丁寧に仕上げています、全編レガートの音楽。 中間部の1小節前で大きくテンポを落とし、蕩けるようにロマンティックに歌う中間部も印象的。214小節のフォルティシモでは、全部の楽器をテヌートで押し付けるように演奏。最後の和音を極めて長く伸ばしていました。 第三楽章では、中間部でのヴァイオリンの単純な伸ばしの音が美しく響き、2番ホルンの低音の動きに付ける弦楽器の音の移り変わりのバランスも絶妙。 第四楽章は、カラヤンの「エーイ!」という声が何度も聞こえるほどの力の入った演奏。82小節のフルートが走り気味なのはカラヤンが煽り立てたのでしょうか。90小節あたりから音楽に落ち着きが失われていました。 曲が進むにつれて興奮のヴォルテージはますます上昇、130小節からの低音弦楽器の力の入りも尋常でなく、再現部直前で微妙にテンポを落としじわじわ加速していきます。コーダも荒々しいまでの凄い迫力です。420小節からのティンパニをトレモロに改変し、クレシェンドさせつつ427小節のfffに突入させる部分など強烈な効果を上げていました。 珍しくも冷静さを欠いたカラヤン。指揮者もオケも興奮状態の八方破れ的爆裂演奏。 今回聴いたのはOrfeoから出ているオーストリア放送局の音源のCDです。 1957年録音としては、痩せた音が気になりました。 (2010.01.05) |