「ベートーヴェンの7番を聴く」59・・・・独墺系の指揮者たち7 カラヤンその3
・フィルハーモニア管弦楽団
(1951年11月28日−30日 ロンドン、キングズウエィホール スタジオ録音)

カラヤンの最初のベートーヴェン交響曲全集録音。第7番はその最初の録音。

後のベルリンフィルと演奏とは異なったしなやかさと清潔感が魅力の演奏でした。

第一楽章冒頭から充分な重みを持って響く和音、続くしなやかな弦楽器の響き。
提示部のフルート直前のタメはありません。ホルンの強奏に続く100小節からの第2ヴァイオリンの短いクレシェンドも効果的。
生き生きと息づく音楽、次第に高揚していく中で300小節のオーボエソロ前のはじめのフェルマータを長めにとり、高揚感を一旦リセットしてさらに坂を登り始める設計のうまさが光ります。

第ニ楽章冒頭和音の最初はアクセント気味。51小節から入る第1ヴァイオリンが美しく、
響き全体は軽い響きながら完璧なバランスと充実した響きで聴かせます。
中間部に入る直前の99小節のオーボエのテヌートとテンポの落とし具合も見事。

第三楽章中間部は速いテンポで素っ気無いほどですが、木管楽器の洒落た動きが印象的。207小節の大きな頂点の直前でもテンポは落としません。
第四楽章冒頭の和音は深い響きで二つの音の間を長めに取ります。330小節から大きく加速しコーダへ突入。コーダのスピード感と高揚感も素晴らしい出来でした。

第三楽章13小節の小さなクレシェンドの積み重ねから緊張感を増していくような、実に芸の細かい部分が多く、相当な準備と練習を積んだことが明白な演奏です。
オケは、木管楽器群とホルンセクション(首席はデニス・ブレイン)が非常に優秀。

今回聴いたのは国内盤のTOCE56044という全集もののCDです。
1951年のモノラル録音ですが既にテープ録音となっていた時期で、残響豊かで安定した再生音で聴くことができました。
(2010.02.02)