・ベルリンフィルハーモニー管弦楽団 (1976年10月22日、1977年1月28日、3月9日 ベルリン、フィルハーモニーホール スタジオ録音) カラヤン3度目にしてベルリンフィルとは2度目の交響曲全集録音中の一枚。 カラヤンの解釈が隅々まで徹底されている演奏。 その反面オケ側の主張も感じられる場面もあり、カラヤンとベルリンフィルとの関係が最も良い関係だった黄金期の録音。 下から突き上げるようなずしりとした手応えの第一楽章冒頭和音。次々と押し寄せる怒涛の弦の16分音符。100小節からアチェレランド、260小節ではトランペットを抑えてホルンを強調。274小節でもホルンを強調。 第二楽章の滑らかでロマンティックな歌は独特なもの。冒頭和音から続く低音弦楽器の妖しい響きは一度聴いたら忘れられないような魅力がありますが、冷たい刃を首に突きつけられたようなゾッとする冷たさが感じられます。 第三楽章では1拍めを強調。トリオのAssai meno prestの最初の部分の弦楽器の伸ばしのファーストヴァイオリンに極端なヴィブラートをかけ、その上で木管楽器が歌います。 トリオの441小節ではフルート浮き上がらせ、590小節ではホルンの二分音符を強調。 これは、カラヤンの解釈というよりもベルリンフィルの自然発生的な趣。 第四楽章の冒頭のフォルティシモの爆発は強烈。音楽は猛烈な速さで駆け抜け、熱狂と興奮のまま終結を迎えます。全ての楽器が均一に鳴り響きひとつのベクトルとなりつき進むコーダには圧倒されました。 ティンパニはフォーグラーでしょうか? 入りのタイミング、絶妙なクレシェンド、そして怒涛のフォルティシモ!・・・凄いです。 実演で聴けば、おそらく良くも悪くも一生忘れ難い体験となるような演奏です。 モーツァルト、ハイドンから続く古典的な側面よりも、今後のロマン派へ予兆をより強く感じさせるようなベートーヴェンでした。第二楽章など、まるで後期ロマン派のようなロマンティックな世界でした。 一度嵌ると抜け出すことができなくなるような強烈な毒を持ったベートーヴェン。 今回聴いたのは国内盤のLP。滑らかで磨かれたカラヤンの芸風に合った録音。 (2010.03.04) |