「エドウアルド・ヴァン・ルモーテル(1926〜1977)」 ブリュッセル生まれ、ブリュッセル音楽院でチェロと指揮を学び1958年から1962年までセントルイス響の音楽監督。このセントルイス響時代に楽団とトラブルを起こし、40人以上の楽団員が辞めています。辞任の後はフリーの日々を過ごしました。 軽くなめらかでクリーミーな色彩感と柔らかなリズムはルモーテル独特のもので、特にフランス音楽を演奏した時には大きな強みを発揮していました。 ・ロンドン交響楽団 (1950年代 スタジオ録音) 1950年年代後半のVOXへのスタジオ録音。今回聴いたのは、VOX系のレーベル、Allegrettoから出ていたCDです。 これは演奏を云々する前に録音の貧弱さでかなり損しています。 CD初期の産物で楽章毎のトラックもない商品としてヒドイもの。 スリムでシャープなベートーヴェン。 ストレートな解釈と生き生きとしたリズムで、スコアに書かれた音はしっかりと音になっているものの、音をひとつひとつ短く固く区切っていくのは余韻不足。 第一楽章冒頭から乾いて鄙びた音です。 均衡のとれたスリムな演奏ですが、音が汚く潤いに欠け、度を越した軽く薄い音にはかなり興を削がれます。 コーダの408小節目で一旦止まったかのようにテンポ落すのがユニーク。 展開部への絶妙なテンポ変化と音楽へのノリは只者でない雰囲気。 再現部の前の265小節に入ってもテンポは上げず、コーダの前半部分から加速していきます。 第二楽章は個性に乏しいものの、淡々とした語り口が良い雰囲気を出していました。 213小節のクレシェンドはトランペット強調。 第三楽章はオケから軽い響きを引き出し、コマネズミが身の回りを動き回るような軽妙さ。 快調に飛ばす第四楽章は汁けのない恐ろしくデッドな音。 再現部直前の219小節の弦楽器の16音符が充分弾けていないようです。 コーダの350小節から加速。364小節のティンパニのsfを強調し最後の盛り上げを演出。 マスターテープの状態が悪かったのか、それとも録音そのものでしょうか。 残響少な目で水気なしの干し物のような音で、栄養失調気味のあばら骨が浮き出るような骨組みのレントゲン写真を見るような趣。 ティンパニなど金盥に雨粒がパラパラと落ちるような音です。 第二楽章の左右のバランスも不自然で、ホルンとトランペットの音の区別がつかないような部分もありました。 ステレオですが録音の貧弱さで演奏の魅力が伝わってきませんでした。 (2012.03.14) |