「ロルフ・クライネルト」(1911〜?) 旧東ドイツの指揮者。クライネルトについてはあまり判りません。アーベントロートの後任として旧東ドイツのベルリン放送交響楽団の常任指揮者。 クライネルトの商業用録音では、LP初期の外盤が今でも中古市場で見かけますが、国内盤比較的少なく、LP時代に日本国内で出ていたのはドイツシャルプラッテン原盤のハイドンの交響曲第101番「時計」くらいだったと思います。 旧東ドイツのベルリン放送局には、日常的に放送された録音が数多く残っているようです。 ・ベルリン放送交響楽団 (不明 放送用スタジオ録音) 頑固なまでの伝統墨守型の演奏、質実剛健な素朴なオケの音は懐かしささえ感じさせます。オケのアンサンブルがいささか甘いのは、放送用ライヴのためかもしれません。 第一楽章は動きは少なく不動のテンポが支配、剛直なまでのゴリっとしたオケの響きと生き生きとした躍動感が実に見事、展開部に入る部分の弦楽器の内声の強調も音楽に生命力を与えています。 冒頭和音が無造作に始まる第二楽章も、クライネルトの誠実な棒が切実な哀歌としてじわりじわりと聴き手に迫ります。 第三楽章中間部の弦楽器と木管楽器のバランスも非常に良く、441小節目の2度目のトリオでテンポを速めます。 第四楽章も豪快な男の世界。98小節目付近でオケは音楽の流れ乗り切れずに遅れ気味となるものの、350小節で大きなタメを作りながらコントラバスを強調。コーダでは壮絶なクライマックスを築き上げていました。 脇目を振らずの直球勝負。ところどころでクライネルトの気合らしき声も入る熱演でした。最後で激しく盛り上げて終わるのにはある種のクサさを感じさせるものの、真面目で誠実な取り組みには好感が持てました。 奥行き豊かなバランスの良いオケの響きは、クライネルトが凡庸な指揮者でなかったことの証明だと思います。 今回聴いたのは社長が逮捕され倒産してしまったヨーロッパのレーベルPILZから出たものです。良好なステレオ録音ですが、第3楽章100小節中間部の入りに大きな編集の跡があり、ここで演奏者の気分が大きく変わるの気になりました。 PILZのクライネルトではシューマンの「ライン」も出ていました。 (2010.11.25) |