「ルドルフ・ケンペ(1910 - 1976)」 ドレスデン生まれ、最初オーボエを学び1929年からライプツィヒゲヴァントハウス管弦楽団の首席オーボエ奏者となっています。 この時のゲヴァントハウス管の指揮者はブルーノ・ワルターでコンサートマスターはシャルル・ミュンシュでした。 1935年ライプティヒ歌劇場で指揮デビュー、以後ケムニッツやヴァイマールなどのドイツ国内各歌劇場の指揮者を歴任するかたわら、1959年からドレスデン国立歌劇音楽監督。 ロイヤルフィルやチューリッヒトーンハレ管の首席指揮者の後、その死までミュンヘンフィルの首席指揮者。 ケンペの第7番の録音は、ミュンヘンフィルを振った交響曲全集があり、ドレスデン国立歌劇場管とのリハーサル録音もあります。 ・ミュンヘンフィルハーモニー管弦楽団 (1971年12月20−23日 ミュンヘン 市民ビアホール スタジオ録音) 1971年から73年にかけてEMIへの交響曲全集中の1枚。 澱みのない音楽の自然な流れは長い歌劇場生活で培われた力でしょうか。 衒いのない知的で抑制された表現が実に自然です。 第一楽章序奏から柔らかな響きでゆっくりと進みます。 128小節のスフォルツァートのずしりと強調。主部のAllegri vivaceに入ってから64小節目の自然なタメがありました。 219小節で音楽の流れが一瞬止まり、リセットしてからの加速。 255小節の再現部の盛り上がりではトランペットを思い切り強奏。 通常加速することの多い再現部前270小節も不動のテンポで過ぎていきます。 307小節の経過句のコントラバスのピチカートも雄弁。 オーボエソロの後、315小節のティンパニの意味深い響きが印象に残りました。 コーダでは最初は遅く、すり足忍び足でしだいに430小節から加速し大きく飛躍。 第二楽章も自然体。冒頭主題のヴィオラ以下のなんとも良い音。 フォルティシモも力強く、102小節からの中間部分の木管楽器のおおらかな歌の下に付ける弦楽器のバランスも見事。 第三楽章はスタッカートはっきりさせリズムの明快さを演出。 スピード感に満ちた第四楽章は、71小節で一度ピアノとなりますが、ここまでのディミヌエンドの絶妙なタイミングにはほれぼれするほど。 単調な繰り返しの中で、ベートーヴェンが仕掛けたわずかな変化部分を見逃していません。333小節ではトランペットをかなり強調。 再現部は幾分速く、コーダに入ってから第1,2ヴァイオリンの掛け合いからヴィオラが初めて加わる部分など鳥肌がたつほど感動しました。 指揮者とオーケストラが、ベートーヴェンが書いた音楽に畏敬の抱き、 忠実にして誠実に全力投入している姿が自然と伝わってきます。 これがドイツの人たちが日常的に感じているベートーヴェンの姿なのでしょうか。 この頃のミュンヘンフィルの響きも、手作りの木目調家具を連想させるような朴訥な音で良い味を出していました。 今回聴いたのは、東芝EMIから出ていた国内盤CDです。かつて聴いた時は、残響少な目のあまりにも地味な響きが気になりましたが、聴き直してみると暖かで良い音です。 この全集録音の録音会場については、こちらのサイトに詳しく書かれていました。 http://www.kapelle.jp/classic/cd_memo/2001_0117_beethoven_6_abbado%26kempe.html#Anchor23019 (2011.06.24) |