・バンベルク交響楽団 (1982年9月16日 東京文化会館 ライヴ録音) ヨッフム来日時のライヴ録音。この時のバンベルク響の来日公演は沼津公演もありました。 沼津公演以降は同行したレオポルド・ハーガー指揮によるもので、プログラムは「ドン・ファン」、モーツァルトの「プラハ」にドヴォルジャークの交響曲第8番。 海外オケの来演などめったにない地方都市、社会人になって間もない私はホールのS席を早々と購入し、初めて聴くバンベルク響の生演奏にワクワクしながら客席で演奏が始まるのを待っていました。 開演直前になって私の直ぐ前の席に二人の大柄な外国人男性が座りました。 その一人がなんとヨッフム本人でした。 ヨッフムの表情は終始にこやかで、深い教養を思わせる品の良いオーラが全身を包んでいました。私の後ろの席にいた若い女性二人などは「あの人は誰?誰?」と呟くほど。 ヨッフムは前半のプログラムが終わると席を立ちましたが、目の前のヨッフムの巌のような大きな背中は今でもはっきりと覚えています。おかげでハーガーの指揮の印象はほとんどありません。 この来日時のヨッフムの演奏は、ベートーヴェンの交響曲第7番のほか、「田園」やブルックナーの交響曲第8番の録音が残っていて、いずれもスタジオ録音を大きく上回る名演です。 バンベルク響の地味でいて柔らかく芯の有る渋い響きが非常に魅力的、ヨッフムが振るとオケの技量がひとまわり大きくなったかのように聞こえます。 第一楽章冒頭は一瞬ティンパニが早く入ります。39小節め3拍目のトランペットの2分音符強調は珍しい表現。Vivaceの2小節前からVivaceのテンポとなります。 主部も急がずスタジオ録音で実施していたリピートはなし。 277小節で一瞬のタメを作ります。374小節のチェロとコントラバスはpp指示をfとしていました。 コーダでは393小節のヴァイオリンをレガートとして粘りつつ、次に入るチェロとコントラバスを明確にしながら最初はゆっくり入り猛然とクレシェンドをかけながらのダッシュ。412小節からでトランペットの強烈なクレシェンドが入ります。 渋い弦楽器の響きが非常に美しい第二楽章。75小節から入るヴァイオリンの大きな歌が印象に残ります。100小節のテンポの落としも絶妙。 102小節からの♯3つに変わる個所では、最後の4小節でテンポを落していました。 ppの優しさも印象に残ります。226小節からのヴィオラをしっかりと強調。 即興的な変化を聞かせる第三楽章は、テンポは遅いが軽やか。中間部の浮遊感も見事。 ffのあと227小節の経過句で弦楽器をたっぷり響かせp指示をfとしていました。 149,184小節のリピートはなし。 重厚で充実の音楽が展開する第四楽章は、スタジオ録音と同じく切れ目なしに入ります。ホルンの下降音は木管楽器と同じに改変。83小節でホルンが1拍速く飛び出していました。リピートなし。 191小節めからのトランペット強調はスタジオ録音にはなく、335小節のティンパニの乱打も強烈。412小節ではトランペットのクレシェンドからffに突入。 最後の460小節からのティンパニは不発?でしょうか聞こえませんでした。 この演奏はスタジオ録音同様、第4楽章のホルンの主題は木管と同じに改変していますが、スタジオ録音で全て励行していたリピートはかなり省略しています。 本拠地から遠い極東ツァーでのオケの負担を減らしたのでしょうか。 この演奏は、かつてFM東京のTDKオリジナルコンサートで放送されました。 今回はFM東京の音源から正規にCD化したものと、海賊盤レーベルHallooから出ていたCDの2種で聴きました。 Halloo盤にはmade in USAの記述はありますが、おそらく日本製で、演奏日のデータの記載もなし。しかし聴衆ノイズと第4楽章のホルンの飛び出しが完全に一致しているので、FMからのエアチェック録音をそのままCD化したのだと思います。 音は正規発売のCDが奥行きのある良い音。 (2011.07.26) |