「ベートーヴェンの7番を聴く」72・・・独墺系の指揮者たち10 ケンペその3
・トリノRAI交響楽団
(1959年1月16日 トリノ ライヴ録音)

壮年期のケンペがイタリアの放送オケを振ったライヴ。
第一楽章のうちは気の乗らないような平凡な展開ですが、演奏が進むにつれて次第に燃えていく演奏。その日の気分で出来が左右されがちなラテン気質のオケならではのライヴです。

ミュンヘンフィルとのスタジオ録音ほどの完成度はありませんが、誠実な中にも熱く燃え立つような高揚感の有る演奏でした。

第一楽章はゆっくり開始。主部へのVivaceへのテンポの揺れには不自然さを感じました。主部に入ってもゆっくり進み、110小節からもオケの重さが気になりました。
まるでケンペの足を引っ張っているかのようです。178小節からの展開部もテンションの低さはそのまま。275小節でリタルランド。391小節からのコーダも遅いテンポ、ここでの息の長いクレシェンドはうまく決まっていました。

第二楽章ではオーボエの哀愁を帯びたヴィヴラートが印象に残ります。弓を目いっぱい使って弾かせているかのように弦楽器群がよく歌います。212小節で大きくテンポを落とし、214小節からのffも壮大な出来。

第三楽章に入りオケのアンサンブルは粗いものの、演奏に活気が出てきました。いったい何が起きたのでしょうか? オケに突然火が点いたようです。中間部でのトランペットの張り切りようも目立ちました。

第四楽章になるとさらなる集中力でアンサンブルも整ってきました。ほどよい良いテンポとひたすら前へ前へと進む(走る)オケ、ガツンとくるフォルテ。
熱く燃えた第一楽章とはまるで違うオケのようです。
展開部160小節から音楽はメラメラと燃えあがり、169小節から加速。193小節からのディヌエンドは早めに開始。330小節からの音の渦もお見事。
終盤401小節からのトランペットのクレッシェンドも凄まじく、終演後の聴衆も熱狂の嵐。

ケンペの熱意が演奏が進むにつれてオケに乗り移っていくスリリングな演奏でした。
オケの技量はさほど優秀でなく固い響きが気になりますが、後半の健闘ぶりを聴くと地力はあるオケだと思います。

今回聴いたのはArchpelのCDです。細部は比較的明瞭ですが残響少なめの固いモノラル録音。
(2011.09.14)