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「展覧会の絵」を聴く、結局38回の連載の中で紹介できたのは、 14人のピアニストによる16の演奏、ラヴェル編以外のオケ版として9種類12の演奏、 そしてラヴェル編としては43人の指揮者による63の演奏でした。 まだ紹介できなかった演奏の中にはヴァント、アバド、メータ、ヤンソンス、ショルティなど、まだまだ重要な演奏はありますが、とりあえずここで終わりとします。 それにしても、これほど録音が多い曲だとは思いませんでした。おそらく200種以上 あるのではないでしょうか。オリジナルのピアノ譜と、オケ版を含めて様々な楽器への編曲の存在。1曲で2度も3度も楽しめる曲、このような曲はちょっと他に見あたりませんね。これほどまでに様々な版が存在するのは、この曲の中にはムソルグスキーの強烈な個性の内側に多少未完成の部分があって、この点が演奏家や他の作曲家の編曲への誘惑を誘うのだと思います。 いろいろなオケ編曲の中では、使用楽器の着想の奇抜さやオーケストレーションの天才的な閃きという点で、当然ながらラヴェル編の完成度は群を抜いています。 しかし手練手管を動員したストコフスキー編も実に良く出来ていると思います。 ピアノ演奏は、ホロヴィッツ、リヒテルといった2大巨匠が圧倒的な存在感を示す中で、 独特の個性を見せたウゴルスキや自筆ファクシミリ使用の小川典子は、 長らく存在感を主張できる優れた演奏だと思いました。 さてラヴェル編の演奏としては、オーケストラのヴィルトオジティを要求される曲だけに、 ベルリンフィル、シカゴ響、フィラデルフィア管といったオケの演奏は、オケの実力だけで 一挙に聴かせてしまう説得力があります。 以下に今回私が聴いた中で印象に残った演奏に順位をつけてみました。 <ラヴェル編> 五つ星 ☆☆☆☆☆ 1:ゲルギエフ&ウィーンフィル 2:チェリビダッケ&ロンドン響 3:カラヤン&ベルリンフィル (1986年) クーゼヴィッキー&ボストン響(1944年)ただしカットがなければ2位 トスカニーニ&NBC響(1953年) 以上の演奏が群を抜いて五つ星 四つ星☆☆☆☆ 4:マルケヴィッチ&ベルリンフィル ブール&南西ドイツ放送響、 ヴァント&北ドイツ放送響 5:オーマンディー&フィラデルフィア管(1966年) ショルティ&シカゴ響 三つ星☆☆☆ 6:クリュイタンス&フランス国立放送管 スヴェトラーノフ&ソビエト国立響 7:ドラティ&ミネアポリス管 コンロン&ロッテルダムフィル 他にも興味深い演奏はありますが、オケの合奏力と個別の技量が抜群で、指揮者の個性が抜きん出ていて大きな説得力を獲得しているという点で、以上の14種が、今回聴いた120種類余りの中で最も印象に残った「展覧会の絵」です。 「展覧会の絵」は、正直なところあまり奥の深い曲ではないと思います。 難しいことを考えなくともオーケストラを聴く醍醐味を感じさせてくれる点で、 今回はベートーヴェンの「第九を聴く」の時のような苦労は感じずに、 楽しく聴き比べをすることができました。
(2002.06.15)
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