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「ウラディミール・フェドセーエフ(1932〜)」 豪快で華麗な力強さと理知的な解釈が絶妙のバランスを見せるロシアの名匠フェドセーエフ。このフェドセーエフの「展覧会の絵」は、実演で聴く事ができました。 しかし、このときは、「ヴィドロ」の中間部が大きく盛りあがったことと、「キエフの大門」終結部の鐘の乱打が印象に残っていますが、旧ソ連崩壊後の混乱の影響で、優秀なメンバーの多くが流出した結果、モスクワ放送響のアンサンブルにかつての緻密さと輝かしさが失なわれていたことが強く印象に残っています。 フェドセーエフはモスクワ放送響を振って3回の録音を残していますが、今回はその中でも最も個性的な1977年録音を紹介します。 ・ モスクワ放送交響楽団 (1977年 10月 スタジオ録音) フェドセーエフがモスクワ放送交響楽団の首席指揮者に就任してまもなくの録音。 咆哮する金管楽器、重量感溢れる低音弦楽器、テンポの緩急も大きな、極めて個性的でロシア色豊かな名演でした。冒頭プロムナードのゆったりとしたテンポと対照的に次の「グノーム」のなんという早いテンポ、通常の演奏の倍近い早さで、このテンポに一糸乱れぬ精確さで棒にぴったりついていくコントラバスなど、各所で全盛期のモスクワ放送響の妙技を聴く事ができるディスクです。「サムエル・ゴールデンベルクとシュミイレ」で、絶妙のアクセントとテヌートで貧相なユダヤ人を表現するトランペットには、思わず笑ってしまいました。なおここの終結部は、原典版のとおりドレシシ。 色彩感豊かな「殻を被った雛鳥の踊り」では中間部にテンポをぐっと落とし、アクセントを極端につけ独特の効果をあげていました。大蛇がのたうつような「ヴィドロ」、情緒たっぷりに歌う「古城」、「カタコンブ」から「キエフの大門」までは、金管、打楽器大活躍の一大クライマックスを築きます。フェドセーエフの抑制の効いた棒は、下品に陥る一歩手前で止まっていました。 後のフェドセーエフ2種の録音は、ぐっと抑制と厚みが増した分、このような豪快さは薄れていきました。オケのレベルも次第に低下しているようです。 「ヤンスク・カヒッゼ(1936〜)」 最近のクラシック音楽界は、メジャーレーベルや大手マネージメントがスター演奏家たちのギャラを異常に吊り上げてしまった結果、クラシックの新録音の製作コストがはね上がってしまい、意欲的な新録音が出て来れなくなってしまいました。 その一方小回りの聞くマイナーレーベルは、ギャラの比較的安い演奏家を用いて、今まで紹介されていなかった珍しい作品や演奏家たちの録音を積極的に出すようになりました。今回紹介するディスクもその一つで、これから紹介するのは黒海東岸の国、グルシアの首都トビリシのオケを振ったカヒッゼの録音。ロシア音楽のみならずベートーヴェンやその他の作曲家の録音を廉価で集中的に出しているHDCレーベルの演奏です。 カヒッゼは、70年代にボリショイ劇場のオケを振って、荒削りで民族色豊かな「ガイーヌ」全曲の録音を残していたカゼッセと同一人物だと思いますがが、それ以後の録音は伝わって来ず、私の頭からも完全に抜けていました。 ・ トビリシ交響楽団 (1999年 スタジオ録音) ロシアの東方民族色豊かな「展覧会の絵」、録音も良くオケの技術もなかなか優秀です。 アクセントをゴツゴツにつけた「グノーム」、荒涼とした砂漠の中で、地声を効かせながら歌っているかのようなきわめて東洋的で民族色豊かな歌いまわしを見せる「古城」など、エキゾティックな魅力に溢れた演奏です。 ここで面白いのはシンバルの音色で、この小型のドラのようなボシャンとした音は、おそらくグルジアの民族楽器ではないでしょうか、これは実に独特の効果を上げていました。このシンバルなどの金物類の打楽器を追加した「カタコンブ」など完全にアラビアンナイトの世界。ヴィヴラートたっぷりに金管が歌いまくる「キエフの大門」など、多少バランスを崩しているとはいえ、面白さではピカイチの演奏でした。
(2002.05.28)
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